不注意では済ませられない危険な兆候

12月6日付 日本経済新聞 三菱自動車、PCB含む産廃を誤処理

 三菱自動車は5日、特別な処理が必要な産業廃棄物のポリ塩化ビフェニール(PCB)を含んだ部品を一般の産廃として処理していたと発表した。9月に水島製作所(岡山県倉敷市)でPCBを誤処理していたことが判明。社内調査したところ、愛知県の研究施設、社員寮、神奈川県の研修所でもPCBが含まれる蛍光灯部品などを、国が認定する施設以外で処理していた。

 三菱自は電気関連の工事の際に設備に含まれるPCBの含有を確認するチェック体制に不備があったことが原因で、今後管理責任者を決めるという。

PCB廃棄物を、ただの産業廃棄物として処理することは危険ですし、もちろん違法です。

コストカットのためではなく、記事にあるとおり、誤廃棄というのが本当の実態だろうと思います。

三菱自動車社に重大な過失があったのは間違いありませんが、
担当者の不注意やチェック体制の不備を指摘するだけで、問題が解決したと思い込むのは危険だと思います。

行政機関においても、PCB廃棄物を誤廃棄するケースが増えていますので、日本の組織全体に共通する危険な兆候が表れているように思います。

従来なら、どの組織においても、専任の廃棄物管理者(俗にいう、その組織での「廃棄物のヌシ」的存在)が設置され、その人の管理下で委託処理や届出書類の作成などが行われてきました。

そのような職責を担ってきたのは、大部分の組織において団塊世代のベテラン職員が中心でした。

団塊世代の一斉退職後、一部の人は嘱託や再雇用の形で組織に残り続けましたが、彼らの知識や経験が、組織内で共有されたかというと、甚だ疑問に思います。

それは、団塊世代の人が情報を独占しているからというよりは、組織が彼らの知見を重要と思わなかったために、下の世代への情報伝達が円滑に進まなかったのではないでしょうか。

廃棄物管理というものは、企業の収益に貢献するものではなく、逆にコスト削減の対象としか考えられないため、
元々あった「ヌシ」の知見が伝承されずに、法改正や経営環境の変化に伴って風化してしまいました。

情報自体は引き継ぎ書のような形で、下の世代に引き継がれているのかもしれませんが、
それを誰も紐解かず、あるいはバージョンアップをし続けなければ、数年のうちに無用の長物になってしまいます。

わずか数行の短い文章でしか報道されていませんが、
PCB廃棄物の誤廃棄が起こった背景を考えると、首筋が少し冷たくなりました。

心ある企業の担当者の方は、今すぐ過去の遺産を引っ張り出し、現在の制度に対しても使用に耐えられるようアップデートを始めてください。

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