スラグによる悲劇2件

毎日新聞 2014年02月19日 20時15分(最終更新 02月19日 20時45分) スラグ有害物質検出:群馬の工事45カ所で大同特殊鋼製

 大手鉄鋼メーカー、大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から出た鉄鋼スラグで環境基準を超す有害物質が検出されるなどした問題で、太田昭宏国土交通相は19日の衆院予算委員会で、2008年度以降、群馬県内の国道など45カ所の工事で、大同製のスラグが使用されていたことを明らかにした。

 石関貴史委員(維新)の質問に答えた。

 答弁などによると、45カ所のうち、前橋市の国道17号など道路工事24カ所では、アスファルトの下に敷く下層路盤材として利用。このうち、4カ所は六価クロムやフッ素などの有害物質が検知されなかったことを示す品質証明書が添付されていなかったという。

 また、茂木敏充経済産業相は、販売額より高い費用を引き取り手に支払って高額な処分費用を免れる「逆有償取引」をしていたとして、大同に対し、聞き取り調査をし、再発防止を指導したことを明らかにした。答弁によると、逆有償取引が行われたのは09年7月〜12年6月で、茂木経産相は「誠に遺憾」と話した。

既に「鉄鋼スラグ協会」から品質保証の認証が取り消された大同特殊鋼ですが、
毎日新聞 2014年02月08日 有害スラグ:協会、品質保証取り消し 大同特殊鋼、販売困難に
事態はまだ悪化しそうです。

廃棄物処理法の脱法行為とみなされれば、相当重いペナルティを覚悟せざるを得なくなりそうです。

この問題の本質を一言で言うならば、「大同特殊鋼の販売(?)していたスラグは廃棄物なのか、それとも有価物だったのか」に尽きます。

大同特殊鋼側の認識はもちろん「有価物」だったと思いますが、廃棄物由来の有価物から有害物質が溶出したという事実をどう評価するかで、スラグの位置づけが分かれることになりそうです。

このあたりの考え方は、「総合判断説」と呼ばれる行政運用(≒通説)の根幹に関わるものですので、いずれ時間がある時にでもブログで解説をしたいと思っております。

その際には、当ブログでは一切取り上げていなかった「規制改革通知の改定」についても触れることになります。

次は、鳥取県西部における一般廃棄物処理の問題について。
2014年2月18日 日本海新聞 エコスラグセンターを機能転換 リサイクル施設へ

 鳥取県西部広域行政管理組合(管理者・野坂康夫米子市長)は、鳥取県伯耆町岸本の広域灰溶融施設「エコスラグセンター」について、2015年度末に運転を停止し、プラスチックを選別処理するリサイクル施設に機能転換する方針を固めた。不燃ごみ残渣(ざんさ)からプラスチックを取り出し、固形燃料として活用する。17年度稼働を目指して改修する。

 04年度に運転が始まったエコスラグセンターでは、県西部の自治体のごみ焼却施設で発生する焼却灰を高温で溶かし、小石状のスラグを生成、道路の路盤材などに再利用している。大口の境港市が16年度から米子市クリーンセンターへの搬出に切り替えるため、費用対効果の観点から新たな施設利用を模索してきた。

 新施設では、不燃ごみの残渣からプラスチックを選別する機器を導入する。既存の資源選別機や破砕機も活用するため、これまで実施してきた鉄やアルミなどの資源回収は継続する。稼働期間は15年間。

 プラスチックの回収量は年間1100トンを見込み、固形燃料を生成する専門業者に全量を引き取ってもらう。

 14年度の基本設計、15年度の環境影響調査を経て、16年度に着工する。整備費は5億7200万円、運転管理費は年間2億2千万円。県西部9市町村の費用負担の割合を今後検討するという。

国の補助金の問題もあると思いますが、高額すぎる焼却灰の広域溶融(スラグ化)処理を止め、不燃ごみからプラスチックを取り出し、燃料として売却するための設備に転用するとのこと。

どんな溶融炉を置かれていたのかと検索してみると、
鳥取県西部広域行政管理組合のサイト 施設概要 に

総事業費 3,799,500千円
(内訳)
用地取得費    345,000千円
施設建設費   3,454,500千円

と書かれていますので、総事業費約38億円の非常に高額な施設だったようです。

また、

○組合圏域内で発生する残さを集約して溶融処理します
 圏域内に分散するごみ焼却施設、不燃物処理施設、し尿・下水処理施設から発生する残さを効率的に溶融処理します。

と、焼却灰等の溶融だけを行う施設だそうですので、
ランニングコストが非常に高額であったものと思われます。

プラスチックごみを資源化すること自体は良いのですが、焼却灰を新たにどこに持っていくのかが気になります。

また、プラスチックを固形燃料の原料として引き取ってもらうとありますから、おそらくRPFの製造業者に売却するという意味だと思われます。

不燃ごみや粗大ごみに含まれるプラスチックのすべてがRPF原料に適しているとは思えませんので、
全量売却ということになれば、不適物を除去するためのプラスチック選別ラインを設ける必要がありそうです。

既存の資源選別ラインではプラスチックの選別はできないと思われますが、どのような設備の入れ替えをするのか?

記事を一読する限りでは色々と疑問が尽きない計画ですが、コストとエネルギーの無駄遣いである、焼却灰の溶融処理を止めることには賛成です。

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