相見積をとらない上客

ようやく事態の詳細が見え始めてきたので、満を持して取り上げます(笑)。

2016年7月23日付 神戸新聞 「ダイオキシン見積書偽造か 組合が神戸市に提出

 大阪府能勢、豊能(とよの)両町でつくる豊能郡環境施設組合が、高濃度ダイオキシンを含む大量の廃棄物を神戸市西区に無断で埋め立てた問題で、西区の産業廃棄物処理業者が作成したとして組合が神戸市に提出した見積書が、偽造されていたことが22日、分かった。組合が記者会見し「(産廃業者の)見積書の印章は正規のものではなかった。大阪市の仲介業者から渡され、だまされたと認識している」と説明した。

 見積書は産廃業者が今年2月、1キロ当たり3千円で汚染物の処理を請け負うと組合側に提示した内容。組合は今月21~22日、無断で埋め立てた経緯を説明するためとして契約書や見積書、説明資料を神戸市に提出。神戸市が産廃業者に確認したところ、書式や印章の形が異なっていた。

 組合が提出した説明資料によると、組合は2月9日、産廃業者や、大阪市と姫路市にある仲介業者2社との4者で覚書を交わし、1キロ当たり3千円で汚染物を処理する契約を産廃業者と締結。大阪市の仲介業者に処理、運搬費として9650万円を支払った。ただ産廃業者は、姫路市の業者を経由して受け取ったのは約300万円だったとしている。

 産廃業者によると、廃棄物の種類に応じ、1キロ35~90円で請け負ったという。「正式な見積書は作って姫路市の仲介業者に出しているが、なぜこんな見積書が組合から出てきたのか分からない。出した記録もない。そもそも1キロ3千円は高すぎる」と話している。

 一方、組合と産廃業者を仲介した大阪市の業者が、廃棄物を茨城県稲敷市の民間会社の研究所にも搬出したと説明したことが分かっている。

この事件には複数の論点があります。

・豊能郡環境施設組合が委託した焼却灰固化物は一般廃棄物か産業廃棄物のどちらなのか
・9650万円もの契約行為を一者随意契約で行ったのか否か
・処理業者に実際に支払われる委託料金を排出事業者が知らないことの可否

他にも色々ありますが、今回は以上の3点に絞って問題点を考察します。

1.焼却灰固化物は一般廃棄物であった

豊能郡環境施設組合は一部事務組合ですが、そこで焼却をしていたのは紛れもなく一般廃棄物。

ゆえに、焼却灰も一般廃棄物となり、それを民間業者が固化したところで産業廃棄物には成り得ません。

最初から一般廃棄物の最終処分委託として、事前に神戸市に通知していれば、苦しい言い訳を繰り出す必要はありませんでした。

もっとも、その場合でも、神戸市は最終処分場への搬入を拒否したことは間違いありませんが・・・

法的には、通知だけが義務であり、受入れ先の自治体の拒否には法的拘束力が無いため、そのまま最終処分場への搬入を強行することも可能でしたが、一部事務組合がそのような強硬手段に訴えることは事実上不可能ですね。

2.公金の支出手続きとしては非常に不適切だった

管理会社業界なるものが存在し、業界全体が結託して高値の見積書を提出し合っていたのであれば話は別ですが、約1億円の支出をするのに、複数の事業者から相見積を取らなかったのであれば、極めて不適切な契約行為と考えられます。

地方自治法上、随意契約を行うための条件として

・緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
・競争入札に付することが不利と認められるとき。
・時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。

その他の規定が置かれていますが、今回のケースはそのいずれの条件もあてはまりません。

通常の契約手続きに則ると、随意契約をするとしても、複数の事業者から見積書を徴するのが当然ですので、豊能郡環境施設組合が声を掛けた事業者全員で高値受注のために結託していたのでしょうか?

現実的にはその可能性は低いと思われますので、あくまでも筆者の憶測の域を出ませんが、やはり相見積を徴していなかったような気がします。

3.管理会社≒中抜きブローカー

今回のケースでは、2社の管理会社で9300万円もの中抜きをしていたことになります。

「紹介料その他を支払ったので儲けはほとんどない」そうですが、にわかには信じがたい話です。

また、仲介業者には、無断で処理業者の印章を偽造し、見積書と契約書を作成した疑いが浮上していますが、それが事実であれば、「私文書偽造」及び「偽造私文書行使」に該当する可能性があります。

しかしながら、豊能郡環境施設組合が言うような「だまされたと認識している」では、ことは済みません。

仲介者が2社入った4者契約をすること自体は違法ではありませんが、産業廃棄物処理委託契約書では、「受託者(処理業者)に支払う料金」が法定記載事項として定められています。

したがって、契約書では、「紹介料込みの総額」ではなく、「受託者(処理業者)に支払われる料金」がわかるような記載をしていなければなりません。

もっとも、今回のケースではそもそもが一般廃棄物なので、産業廃棄物の委託基準を当てはめる必要はないかもしれませんが、
管理会社あるいは仲介会社が加わった契約をしている事業者の方は、今一度契約書に問題が無いかを確認しておいてください。

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