動き出したら止まらない

今回取り上げるニュースはたまたま地方自治体に関するものですが、「行政特有の問題」というよりも、「事業を動かすよりも、それを止める方が難しい」というより普遍的な視点で見ていただく方がより面白いと思います。

2018年1月13日付 京都新聞 「全国唯一「魚アラ再資源化」挫折 京都、赤字続き施設廃止へ

 京都市は、自治体が直営する魚アラの再資源化施設としては全国で唯一の「京都市魚(うお)アラリサイクルセンター」(伏見区横大路)を2018年度末で廃止する方針を決めた。ごみ削減に向け、魚のアラを家畜飼料用の魚粉などにリサイクルして販売してきたが、近年は赤字が続いていた。「市外の民間事業者に任せられる環境になったため」(環境政策局)としているが、約21億円かけて整備した施設が10年余りで役目を終えることに見通しの甘さを指摘する声もある。

 市によると、市内の市場やスーパーなどから排出される魚の頭や骨などのアラは、1975年ごろまで複数の民間事業者が処理施設を操業していた。しかし悪臭対策が不十分で近隣住民から苦情が寄せられていたほか、安い魚粉の輸入も増加し、約30年前に経営破綻が続出した。

 市は1995年に市内唯一となっていた民間施設を買収して悪臭対策を進め、魚アラの排出事業者、収集運搬業者、地元代表らの協議会による運営に転換させた。老朽化を受けて2008年に市が直営施設に建て替えた。ところが直後に機械の不調が続き、53日間操業停止となり、対策工事に9千万円かかった。

 市によると、年9900トンの処理能力に対して近年の搬入量は4500トンほどで推移し、収支は毎年1億~2億円の赤字が続いていた。

 市は、今後改修経費が必要になることや魚粉価格の安定で大阪などの民間事業者への搬入が可能になったとして、廃止を決めた。施設や跡地の活用法は未定。

 市議会には、計画段階の投資効果などの見方を疑問視する意見もある。市施設管理課は「アラを市内で処理するために運営を続けてきたが、状況が変わった。今後は市内での収集などに関する仕組みを関係業者と構築したい」としている。

公営化した途端に機械が故障するという、「公営化アルアル」のくびきからやはり逃れられなかったようです。

機械がそもそも古かったのか、機械をメンテナンスする人間がいなくなったのか、あるいは第三者による妨害工作なのかは存じませんが、「よく聞くお話」でもあります。

魚のアラは悪臭が特にひどいゴミですので、自治体が自らリサイクルに乗り出したとしても、良くも悪くも「前例踏襲」を旨とする組織では経営がうまくいくはずもなく、投資効果を期待すること自体が難しかったと思います。

ここはむしろ、半ば強制的とはいえ、経営に見切りを付け閉鎖を決断したことを健全と評価すべきかもしれません。

あと、これはお役所特有の問題解決手法かもしれませんが、
「魚アラの排出事業者、収集運搬業者、地元代表らの協議会による運営に転換」という方法では、それぞれの当事者の思惑がともすれば利益相反になることが多く、「民主的」というよりも、「船頭多くして船山に上る」になりがちです。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ