稀有な自浄作用

役所という存在を、「法令順守の権化」と考えている人が多いと思いますが、彼らの実態はそうではないことが多々あります。

そうなる理由は主に2つで

1つは、「役所、あるいは役人が決めたことが法律だ」という、時代錯誤の壮大な勘違い。

「そんなバカな役人はいないだろう」と思われるかもしれませんが、「通知」を「国民・事業者に対して強制力がある存在」と誤解、あるいは盲信している人は、このカテゴリーに分類されます。

残りの1つは、「法律の規制趣旨や社会常識の無知」です。

司法修習をみっちりと受けた弁護士でさえ、日本法の全部を熟知することは不可能ですので、「ただのサラリーマン」に過ぎない行政職員に、法律の隅々まで理解しろという方が無理なのかもしれません。

とはいえ、大部分の行政職員の方は、「公僕になろう」と思い定めるくらいに真面目な気質ですので、自分が担当する仕事に関する直接的な法規制については、ひととおり理解できていることがほとんどです。

しかし、直接ではなく、間接的な関係にある法規制の場合は、よほど勉強好きな方でない限り、非常にお寒い状況と言えましょう。

当ブログ2018年1月12日付 「官製リサイクル偽装」 では、大阪市建設局によるスラグの不適切な押し付け問題をご紹介しました。

大阪市(の建設局)が、上記の2ケースのいずれに該当するかはわかりませんが、同じ大阪市の廃棄物部局が自浄作用を発揮し、不適切なスラグを流通させることに異を唱えるという、喜ばしい続報がありました。

2018年2月2日付 毎日新聞 「大阪市 下水道18社を指名停止へ 埋め戻し材不正で

大阪市発注の下水道工事を巡り、複数の業者が市の指定より安価な資材を使って不正な利益を得ていた問題で、市は工事を請け負った計18社を3カ月の指名停止処分にする方針を固めた。2日に業者名や損害賠償の請求額を公表する。一方、市の資材の取り扱いが廃棄物処理法違反にあたると内部から指摘を受けたことも判明。市は改善策を検討する。

記事のタイトルといい、この文章からは、大阪市建設局よりも、「不正を働いた業者」の方に、批判の力点を置いていることがうかがえます(苦笑)。

もちろん、不当に工事費を節減し、税金の一部を掠め取った業者に問題が無かったとは言えませんが、そもそもの発端であり、問題の根源を作っていたのは大阪市建設局に他なりません。

廃棄物処理法に基づく指針では、市が自ら公共工事に用いる場合、スラグの大きさなどの基準を仕様書で定めなければ「廃棄物」と見なされ、無許可処分になる。しかし、市は大きさを定めておらず、大きな塊が混入するケースもあったという。このため、廃棄物担当課が違法の疑いがあると指摘した。

このくだりも、大新聞にしてはあまり練れた文章になっておらず、マスメディアがよくやりがちな断言口調になっています(苦笑)。

「指針」が「無許可処分かどうか」を決めるわけではありませんので、論理の飛躍があると言わざるを得ませんが、文章の趣旨としてより重要なのは、「廃棄物担当課が違法の疑いがあると指摘した。」という部分。

大阪市長のスラグ活用(?)に対する思い入れが強くなかったという理由があるのかもしれませんが、同じ役所の他部局に対して公然と違法性を指摘するということは、役所内の人間力学上なかなか珍しいことです。

ここで、大阪市環境管理課がスラグの不適切な利用について釘を刺したことで、
大阪市のみならず、他の地方自治体にも違法性を認識させる貴重なきっかけになると思います。

( ^ω^)b グッジョブ!!

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