官製リサイクル偽装

記事は大阪市に関するものですのが、大阪市のみならず、下水汚泥の溶融施設を抱えている自治体の多くは、公共発注工事において同じようにスラグの利用を求めて(強制?)います。

2017年12月27日付 毎日新聞 「大阪市下水工事 抽出調査、全件で不正 全19社関与

 大阪市発注の下水道工事を巡り、複数の業者が市の指定よりも安い資材を使って不正な利益を得ていた問題で、市は26日、抽出調査した15件全てで不正があり、元請けと下請けの全19社が関与していたと発表した。業者は全ての工事で、土壌メーカーなどが発行した白紙伝票に虚偽の数値を記入するなどして市に虚偽報告していた。市は2012年度以降の工事269件全てを調査し、来年3月末までに結果を発表する。

 市は12年度以降、下水道工事の埋め戻し材として、下水汚泥をリサイクルした「下水汚泥溶融スラグ」を混ぜた改良土を使うよう業者に指定し、設計書に明記した。

(中略)

 下水汚泥を工事資材に変え、公共工事に活用する夢のリサイクル計画の現場で不正が横行していた。大阪市の計画に協力してきた土壌メーカーからは「計画は最初から破綻していた」などと市の管理のずさんさを問う声が高まっている。

 市が2012年度から下水道工事への活用を義務付けた「下水汚泥溶融スラグ」は、土壌メーカーが市からスラグを購入して改良土と混ぜ、工事業者に販売して現場で使う仕組みだ。

 関係者によると、市は導入時、「スラグを廃棄物として処理すると費用がかかるので、公共工事に使いたい」とメーカーに協力を依頼したが、市のスラグは品質が低く、メーカーの評判が悪かったという。

 通常、スラグは日本工業規格(JIS)で粒度(粒の大きさ)が4.75ミリ以下とされるが、市はスラグをふるいにかけるなどの粒度調整をしておらず、JIS基準を満たしていない。直径数センチの塊が混じることもあるといい、あるメーカーは「実態は資材ではなく廃棄物だ」と話す。

 このためメーカーはスラグの取り扱いを敬遠し、工事での供給は安定しなかった。別のメーカーは「市が質の悪いスラグを業者に押し付けた結果、不正は起こるべくして起きた」と批判した。

「資材ではなく廃棄物」と、毎日新聞らしい鋭い行政批判がなかなかに痛快です。

市場で流通させられる品質のスラグではないと大阪市の当局が認識していたのであれば、
わかりやすく言うと、下水汚泥の溶融固化物を工事業者に不法投棄させていたと言い換えることも可能です。

溶融スラグの技術的課題について、わかりやすくまとめた資料はないものかと検索をしたところ、
新潟県糸魚川市さんが「糸魚川市ごみ処理施設あり方検討委員会(2011年11月26日に開催)」の際に公開した資料が最初にヒットし、要点が簡潔にまとめられていましたので、そちらから抜粋させていただきます。

糸魚川市作成 処理残渣の資源化技術の動向

ウ.溶融
スラグ利用上の課題
溶融スラグを100%利用できないのは下の例のような課題を抱えているためです。このうち、1は流通上の課題、2~4は製造上の課題です。
1.利用先の開拓が不十分で需要が少なかったり、利用量が一定でないためスラグを貯留するヤードに貯めきれないで埋め立てる場合もあります。
2.溶融処理しても、処理が不十分だったり、重金属を含む副生成物とうまく分離できない構造だと、スラグから重金属が溶け出すケースもあります。
3.利用に適した粒径等の条件を満たせないと、後処理装置が必要となります。
4.スラグにアルミや鉄等金属が混入すると、利用先によっては錆や発熱等の問題があって、これらを取り除く処理なしには使えない場合があります。

また、処理方式により多少の差がありますが、スラグを造る際の種々の課題もあります。一例としては、以下があげられます。
・多くのエネルギーが必要
・1200度以上の高温で処理するため、耐火物の損耗度合いが焼却炉と比較して大きく、交換費用も高い
・塩類などによる煙道の閉塞などが発生して稼働率、処理率の低下を来たす原因となるケースもある→安定稼働の低減

下水汚泥にせよ、廃棄物焼却灰にせよ、スラグ化にはこれだけ大きな課題と問題が現実にあるわけですが、
補助金を使って溶融設備を作ってしまった自治体は、リサイクル偽装を続けざるを得ないというところかと思います。

大阪市のように財源規模が大きい自治体の場合は、スラグを廃棄物として処理する方向に転換することも可能なのでしょうが、そのような力技ができる自治体はそれほど多くありません。

さて、今回の記事の内容とは関係ありませんが、
糸魚川市さんの資料は、行政としては稀な、率直かつ誠実な資料と思いました。

資料を作成した方が非常に優秀な行政マンだった、あるいは優秀なコンサル会社だったのだろうと思いますが、前者であったのならば衷心より賛辞を送ります。

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