農業者も市民なのでは?

兵庫県三田市で県警と三田市の見解が折り合えず、ちょっとした社会問題になっている「野焼き」に関する続報が入りました。

三田市が設置したオンブズパーソンからダメ出しが入ったとのこと。

2018年5月31日付 神戸新聞 「三田の野焼き問題、市の積極関与期待

 兵庫県三田市と三田署の見解が異なり、農家に困惑が広がっていた野焼きについて、市オンブズパーソンは30日公表した調査結果で、農家の野焼きを容認してきた市の姿勢を強く批判した。ニュータウンと農村地域が隣接する都市のモデルとして、具体的な解決策も提案したが、農家からは「古くから続けてきた野焼きは簡単にやめられない」という声も漏れた。

 調査結果によると、「周辺に延焼するような規模の焼却は、廃棄物処理法の例外とは認められないのではないか」と三田署から市に照会があった。市は「例外に該当する」と回答し、三田署と市の見解を文書にして市内の農家に配ったという。オンブズパーソンの曽和俊文関西学院大教授は「驚いた。今回の問題の象徴的な出来事」とし、調査結果では「三田署と市の見解が対立していることを市が自ら世間に示し、市民を混乱させたのは極めて不適切」と断じた。

 1996年まで10年連続で人口増加率が日本一だった同市は、農村地帯に隣接する山林にニュータウンが造成された。オンブズパーソンは野焼き問題を「三田の重要課題」と位置付け、刈り取った草をクリーンセンターで焼却するため、回収する仕組みづくりの検討など具体策を提案した。

 ただ、農家にとってあぜの草刈りは害虫を防ぐために欠かせない。ため池の堤防の草を焼くことで新芽の発育が促されて根が発達し、土手の崩壊防止に効果があるともされる。

 農家(73)は「農家にとって刈った草の焼却は必要。ダイオキシン発生防止のために稲わらと草以外は燃やさないことや、煙を少なくするため草を完全に乾燥させることなどを地域で徹底している。消防にも連絡する。情報をオープンにして、相互の理解を進めたい」と話す。

「野焼き=悪」というステレオタイプな見方が、記事の根底にあることをまず指摘しておかねばなりません。

農家の「古くから続けてきた野焼きは簡単にやめられない」という声が紹介されていますが、
農家は野焼き中毒であるはずはなく、習慣として野焼きをしているわけではないため、コメントの書き方に作為的なものを感じました。

正しくは、「経費的・労力的にも、農地で野焼きをするのがもっとも合理的、かつ唯一の解決策」ではないでしょうか?

オンブズパーソンの方の発言にも、先述した「野焼き=悪」のステレオタイプが根底にあるように感じます。

三田市のHPによると、三田市オンブズパーソンとは、次のような役割を担っているそうです。
三田市オンブズパーソン制度

市政に関する意見等をオンブズパーソン(次の表に掲げる外部の学識者)が公正・中立的な立場で調査、簡易迅速に処理し、必要な場合には、市の機関に対して是正等の勧告や制度の改善を求める意見を表明することにより、市民の権利利益の擁護と公正・透明な行政運営を図るものです。

「公正・中立的な立場で調査」と掲げられていますが、農家や、農学の専門家にも意見を聞かれたのでしょうか?

この件に関する調査結果通知書が現時点では公開されていませんので、調査手法に関する疑問はこれくらいにしておきますが、公開されている過去の調査結果通知書を読むと、「公正・中立」というよりも、「市民派弁護士」といった趣の積極的な提言がよく目に付きます。

私個人がイメージしていた「公正・中立」とは少し乖離した姿勢に思えましたが、「それくらい積極的に行政にはダメ出しをしないといけないのだ」という価値観の方が主流なのかもしれません。

■市オンブズパーソン調査結果の要点
1.市は野焼きの苦情に正面から向き合っておらず、問題を正しく把握・分析していない。
2.住民生活に悪影響を及ぼすような野焼きは許されない。不適切な野焼きを禁止するよう指導すべきだ。
3.三田署と市の見解が対立していることを市が自ら世間に示し、市民を混乱させたのは極めて不適切。
4.農業・住宅都市の三田にとって、野焼き問題は工夫して解決すべき重要課題。
5.稲わらや刈り取った草は、市が一般廃棄物として回収するシステムを検討すべきだ。

2の「野焼きは許されない」というのは、被害者とされる側のみに阿(おもね)った「農業者差別」にはならないのでしょうか?

法学の専門家の方ゆえ、こうした素人の意見に対する反論は10個以上お持ちなのでしょう。

5の「稲わらや刈り取った草は、市が一般廃棄物として回収するシステム」は、言うのは簡単ですが、コストがかなり掛かるのは間違いありません。

農家のためだけに、多額の公金を支出する方が不適切なのではないでしょうか?

「いや、公金ではなく農家に負担させれば良い」というお考えなのであれば、これまた、三田市内の農業者だけを不当に圧迫する差別的システムになると思うのですが。

こうしたらどう?

野焼き自体を禁止するのはナンセンスです。

もちろん、周囲に延焼させたり、24時間365日野焼きをし続けることなどは、社会常識としてNGです。

ようは、直近の住民にとって不用意なタイミングで野焼きをしないようにすることが肝心なわけです。

であるならば、地域ごとに「一斉野焼きデイ」を設定し、市当局も十分に周知をした後で、いわば予告野焼きをするようにしてはどうでしょうか?

「メイデイ」のように、特定の日を「三田市一斉野焼きデイ」にする方法もありますが、それだとさすがに大気汚染や煙害を引き起こす可能性が高いので、地域ごとに分散させる方がよろしいかと思いました。

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