需要と供給の法則

2018年8月29日付 時事通信 「廃プラリサイクル補助、3倍増=中国禁輸に対応-環境省

 環境省は、中国が廃プラスチックの輸入を禁止したのに対応し、高度なプラスチックリサイクル設備の導入支援を2019年度から強化する。海外に頼らず、国内のリサイクル体制を確立するのが狙い。同年度予算概算要求に、前年度予算(15億円)の3倍に当たる45億円を盛り込む。
 廃プラをめぐっては、日本から年間約150万トンを輸入していた中国が、17年末に禁輸措置を実施。タイやベトナムなどでも同様の動きが出たため、日本国内に行き場をなくしたペットボトルなどの廃プラが滞留する事態が起きている。
 業者の間では、インドなどへの輸出を模索する動きもあるという。実際に、プラスチックくずの中国以外への輸出量は18年に入り大幅に増えている。しかし、こうした国でも今後、禁輸措置が行われる可能性は否定できず、環境省は国内リサイクル体制を整える必要が不可欠と判断した。
 国内でリサイクルをするには、高度な選別機や洗浄設備、他の製品に加工する設備などが必要。そこで同省は、こうした設備の導入に対する補助金を大幅拡充する。
 対象は、廃プラの破砕・洗浄・脱水設備や、硬くて燃やしにくい炭素繊維強化プラスチックのリサイクル設備などの導入費用。非営利法人を通じ、企業などに半額を補助する。補助は18年度から行っており、予算を拡充した上で20年度まで続けたい考えだ。

日本国内に廃プラスチックが滞留しているというのは記事のとおりですが、
その原因は、日本に廃プラスチック類の処理施設が無いからではなく、
廃プラスチックのリサイクル品に需要が無いためです。

売れる製品なら企業は製造量を増やし
売れない製品は企業は製造量を減らす

中学生でも知っている「需要と供給の法則」の基本原則です。

環境省の補助金政策は、この基本原則を無視していることなります。

基本原則を無視して、売れない製品(リサイクル品)の製造能力をさらに増強するとどうなるか?

大人なら誰でもわかることですが、
コストをかけて製造したリサイクル品がますます売れなくなり、
その結果、日本国内での廃プラスチックの滞留がますます増えることになるでしょう。

どうやら中央省庁は、昭和30年代の「所得倍増計画」の時代とそれほど変わらない感覚でいまだに仕事を進めているようです。

もっとも、官僚になるくらいの頭脳を全員がお持ちですので、個々の職員としては、こうした補助金政策の虚しさを理解している人が多いと思いますが、組織の歯車としては、染みついた慣習を脱却できないというところでしょうか。

さて、ではどうすれば良いのか?

選択肢は2つです。

1つは、「需要が少ない廃プラスチックのリサイクルを止める」

しかし、これは先進国としては取れない選択肢です。

もう1つは、「廃プラスチックのリサイクル品の需要を喚起する」

ただし、「日本銀行のように、株を買い占めることが需要喚起になる」と言いたいのではありません。

また、「需要喚起のために補助金をばらまけ」では、補助金ジャンキーを増やすだけで無策と言えましょう。

私自身に解決策となる具体的な名案はありませんが、
「技術革新」か「リサイクル品を活用した新商品の開発」を待つしかないように思います。

課税や補助金によって、不自然にリサイクル品の需要を作り出す手段もなくはないですが、
単なる部分最適では早晩制度に限界が来ると確信しています。

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コメント

  1. 名無しです より:

    こんにちわ、いつも拝見させていただいております。

    一定以上の規模の企業にはリサイクル製品(RPFとか再生燃料、再生プラ原料)の使用を義務付けるとか、パワープレーを期待したいところです。期待しているだけですが…。
    リサイクル品がバージンに戻すことは、(少なくとも近々には)出来無いわけですから、言い方は悪いですが割高な粗悪品をどうにか使いこなして頂きたいなあと思います。

    正直、悠長なこと言ってられない問題だと思います。多分不法投棄が増えているんだろうなあと。

    更新を楽しみにしております。
    失礼いたしました。

  2. 尾上雅典 より:

    コメントいただき、ありがとうございました。

    おっしゃるとおり、近いうちに廃プラスチックの不法投棄が増えるのではないかと危惧しております。


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