警報器の横流し事件
「詐欺」として報道されていますが、「産業廃棄物の横流し」の方がより本質に近いのではないかと思う事件が起こりました。
2019年1月17日付 メ~テレ 「警報機器の処分代金詐取未遂の疑い 産廃処理業者の社長ら逮捕 愛知県警」
2018年6月、警備会社から処分を依頼された警報機器を処分先へ運搬したように装い、代金約90万円をだまし取ろうとした疑いがもたれています。
容疑者らは警報機器を金属買取業者に売却していて、処分したはずの警報機器がインターネットオークションで売られているのを警備会社の従業員が見つけました。
委託をした警報機器の量がよくわかりませんが、収集運搬と処分費込みで「90万円」というのは、なかなかの金額です。
「その警備会社で溜まりに溜まった不用品の在庫を一斉に処分」というところでしょうか?
いきなりですが、先週末は大学入試のセンター試験でしたので、それにちなんで問題を2つ出題します。
問1「電子マニフェストは産業廃棄物の横流し対策に有効か否か?」
2017年改正は、ダイコー事件の再発防止を企図し、特別管理産業廃棄物を大量に排出する事業者に電子マニフェストの運用を義務付けましたが、果たしてその目論見は論理的に正しいかどうかです。
有効か無効かは個人の見解がわかれるところですので、試験問題としては出題できない話題ですが(笑)、仮に、論述式の試験なら、私は、
「電子と紙の別を問わず、マニフェストは、産業廃棄物を処理した年月日を後付けで記入(あるいは入力)するものなので、産業廃棄物が今この瞬間にどこに存在しているかといった位置情報を示すことは不可能である。
したがって、横流しをされた瞬間に、マニフェストによってその事実に気づくことも不可能であるため、産業廃棄物の横流し対策への効果を期待することはできない」と回答します。
実際、あまりテレビや新聞で報道されないだけで、こうしたオークション市場への産業廃棄物の横流し事例は、非常に多く存在しているのが事実です。
問2「このケースで廃棄物処理法に基づく行政処分の対象となる関係者をすべて挙げよ」
- まずはわかりやすいところから、「収集運搬業者」は、中間処理業者に運搬をしていないのに、運搬終了年月日をマニフェストで報告していたのであれば、「虚偽記載」あるいは「虚偽報告」になりますので、廃棄物処理法第27条の2違反で、「事業停止処分」の対象となります。
- 次、上記で登場した「中間処理業者」が実在し、中間処理をしていないのに、中間処理終了年月日を「虚偽記載」あるいは「虚偽報告」した場合は、同様に第27条の2違反で「事業停止処分」の対象となります。
90万円の詐取に中間処理業者が加担していたのであれば、詐欺の共犯として中間処理業者の名前が上がっていたと思いますが、中間処理業者は、詐取ではなく、マニフェストの虚偽記載のみに関与していたのかもしれません。
いずれにせよ、廃棄物処理法に基づく行政処分は、刑事事件としての経過とは無関係に行うことが可能ですので、今後所轄の地方自治体が粛々と行政処分を行うものと思われます。
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2019年1月21日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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