(100点)日本紙パルプ商事の再発防止策

一月ぶりにブログを更新します。

日付が少々古いニュースのご紹介で恐縮ですが、実務的にはなかなか興味深いテーマですので、復帰第1弾の記事として取り上げさせていただきます。

2019年6月20日付 日本経済新聞 「日本紙パ商事、子会社の社長解任 廃棄物不正処理で

日本紙パルプ商事は20日、子会社の「野田バイオパワーJP」(岩手県野田村、以下野田バイオ)がバイオマス発電所で発生する産業廃棄物を不適切処理していた問題で、関係者の処分と再発防止策を発表した。野田バイオの大田直久社長を7月1日付で解任するほか、日本紙パルプ商事の役員4人の報酬を減額する。再発防止策ではリスク管理体制の構築などを挙げた。

日本紙パルプ商事は代表取締役2人の月額報酬を40%、その他の取締役2人については同20%を1カ月減額する。同社は新規事業におけるリスクの分析や外部専門家による助言を得るための体制を構築し、再発を防止する考え。野田バイオでは廃棄物に関するマニュアルの整備を進めている。

日本紙パルプ商事は4月25日に外部専門家を含む社内調査委員会がまとめた調査報告書を公表した。同社は不適切処理の原因を廃棄物の規制などに対する理解不足などとしている。

野田バイオは、バイオマス発電所で木材などを燃やす時に発生する焼却灰を地盤改良材に使い、2016年から製造・販売していた。2年間で累計1万2000トンを出荷したが、自治体が定める安全基準を満たしていなかった。18年12月に不正が発覚してから、焼却灰は全て産業廃棄物として処理しているという。

そもそものきっかけとなった事件の概要を一言で言うと、廃棄物を有価物と称して販売を装った「リサイクル偽装」案件ですが、事後処理及び再発防止策としては、100点満点です。

不始末案件で褒められても嬉しくないとは思いますが、実効性が高い再発防止策であるため、今後同様の事件が起きた際には、最初に参照されるロールモデルになると思われます。

これまで出されてきた同種のリリース文章では、
テンプレートのごとく「従業員を教育し、再発防止に努めます」という、あまり意味のない言葉が繰り返されることがほとんどでした。

しかるに、日本紙パルプ商事の場合は、
まず、不適切処理が起きた原因を、「廃棄物の規制などに対する理解不足」と認め、
「新規事業におけるリスクの分析や外部専門家による助言を得るための体制を構築し、再発を防止する考え」を表明しています。

よくありがちな「従業員個人の知識不足のみが原因と決めつけて、会社の責任を明確には認めない謝罪文」とは一線を画しています。

また、再発防止の具体策として、
不適正処理を実際に行った野田バイオ社では、「廃棄物に関するマニュアルの整備を進めている。」とのことですので、組織としてルール(マニュアル)が整備されていなかったことへの改善方針が示されています。

マニュアルの整備こそが、すべての企業に共通するリスク管理の第一歩目なのです。

違法行為が起こった原因を、従業員個人の責任として矮小化するのではなく、組織の過失として位置づけた同社の姿勢は真摯なものとして評価いたします。

あ、もちろん、今後二度と同じ法律違反を起こさないことが最重要ですので、今回表明された再発防止策を徹底的に実行していただくことを期待しております。

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