犯人が判明した理由

「コロナ禍」というまがまがしい言葉が巷にあふれている昨今、道徳心をかなぐり捨てた不法投棄が増えた気がします。

「自粛生活でストレスが溜まっているせい」とか
「消費が物の購入のみに向かったせいで、不用物が増えた」と、もっともらしい分析をすることも可能ですが、
一般廃棄物に限って言えば、最寄りの市町村が無料、あるいは非常に低廉な料金で回収する仕組みがある以上、不法投棄を正当化できる言い訳は無いと断言できます。

「諸外国と比べると、日本の路上にはゴミが散乱しておらず清潔」という評価がよく聞こえてきますが、
1995年から1998年にかけて地方競馬場の園田競馬場に勤めた経験を持つ私からすると、
「それは状況次第であり、他者の目が気にならない場所においては、日本人も平気で不法投棄をする」というのが実感です(苦笑)。

最近は園田競馬場に行ったことはありませんが、おそらくは、いまだに外れ馬券や予想紙が平気で路上に捨てられているものと思います。

これは地方競馬のみならず、JRAの各競馬場でも同様でしょうし、ボートや競輪等の公営競技場でも同じ状況だと思います。

結局のところ、
「自分を監視する目が無い場所」や「他人が先に不法投棄をしている場所」においては、
日本人でも容易に不法投棄を行います。

この2つがあてはまる場所としては、「空き家や空き地への不法投棄」があり、今後各地で社会問題化していくことでしょう。

しかしながら、ちょっとした手間と労力さえかければ、不法投棄犯を調べ上げることは割と簡単であることは、意外と知られていない事実です。

その事実の一端を知ることができる報道を紹介します。

2020年11月26日付 神戸新聞 「ごみ不法投棄の男特定 小野市職員のパトロール奏功

 10月22日午後2時40分ごろ、小野市の環境美化推進職員が不法投棄のパトロール中に、樫山町の市道脇で、段ボールやプラスチック製のかごなどの生活ごみ(約13・3キロ)を発見した。

 職員はその場でごみ袋を開き、内容物を確認。その結果、名前や住所につながる書類を発見したため、同署に通報した。

 同署は防犯カメラなどから投棄した加古川市の男を突き止め、事情聴取を行った。男は容疑を認め、「正規の手順で捨てたらよかったが、邪魔くさかった」などと話しているという。

「名前や住所につながる書類」が、ゴミと一緒に不法投棄されるケースは驚くほど多いです。

私自身も、公務員時代に、不法投棄現場からそうした書類を回収し、実行者を突き止めたという経験を何度かしています。

殺人現場から指紋をふき取るような、理路整然とした犯罪隠ぺい策を取る頭を持った人は、逆に安易に不法投棄をせずに、市町村か許可業者に委託をする方が安価、かつ安全と判断できるのかもしれません(笑)。

そうです。

不法投棄は経済的にも割に合わない犯罪なので、「ダメ ゼッタイ」。

もう一つ
一般廃棄物ではなく、産業廃棄物の不法投棄と思われるケースですが、
海に不法投棄をしている様子を動画撮影された挙句に、警察に逮捕されるという、間抜けさと現代の風潮の両方を合わせて感じることができるニュースがありました。

2020年12月9日付 朝日新聞 「博多湾に石膏像を捨てた疑い 「動かぬ証拠」決め手に

容疑者は8月下旬、福岡市中央区那の津の博多港・須崎ふ頭から、予備校内から出たトランペットなどの金管楽器や石膏(せっこう)像などの産業廃棄物約30キロを不法に海に捨てた疑いがある。容疑者が投棄する様子を、目撃者が動画で撮影し、通報。県警が動画から投棄場所を特定し、海底からごみを引き揚げて調べ、捨てた人物を割り出したという。「業者に処分してもらう手続きが面倒でお金がもったいなかった」と容疑を認めているという。

30キロにもおよぶゴミを車に積み、
わざわざふ頭に車を乗り付けて、
ポイポイ海にゴミを地道に捨てる方が、
「逆に面倒ではないのか?」と思ってしまいました(苦笑)。

携帯端末の小型化と高度化によって、「天網恢恢疎にして漏らさず」という社会が現実のものとなりました。

それにより、自分のふるまいを見ている他人がいることに気が付きにくくなったため、不法投棄を実行する際の心理的抑制が以前よりも働きにくくなったとも考えられます。

なんとも皮肉な状況ですね。

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