リーダーシップ

2020年11月25日付 読売新聞 「市有地の産廃撤去開始「大掃除作戦」

 伊豆市大平柿木の宗教法人敷地内に産業廃棄物を含んだ大量の土砂が投棄されている問題で、伊豆市職員らは24日、市有地での撤去作業を始めた。

 投棄された土砂は隣接する市有地や柿木川に流出している。職員が積極的にこの問題に取り組む姿勢を示すため、来春3月まで計9回にわたり、「流出廃棄物大掃除作戦」をすることにした。

 初回の24日は、菊地豊市長と市職員34人、県廃棄物リサイクル課などの県職員8人が参加した。柿木川に流入する市有地の沢筋に沿って、ビニールやプラスチック片といった散乱する産廃を除去した。

市長自らが廃棄物の撤去を実行したということは、市職員の発案ではなく、市長自身の発案かと思います。

市長が不法投棄物の回収活動に加わるという事例は、私自身は聞いたことが無く、全国的にも極めて珍しいケースと思われます。

「政治プレーではないのか」と憶測することは簡単ですが、政治プレーをしたいだけなのであれば、部下である市職員に「廃棄物を回収してきなさい」と命じるだけでも達成可能です。

「命令をする」と、「自ら率先して実行する」の間には、大変大きな隔たりがあり、一般的な事なかれ主義の人間には到底超えられない断崖絶壁があると言っても過言ではありません。

市長自身による陣頭指揮は、部下の士気高揚や市民に与える安心感という面でも、大変意義のある行動だと思いました。

そもそもの不法投棄については、実行者が誰であるかはまだ判明しておらず、原因者への責任追及を行うべき段階にはありませんが、不法投棄された土地の所有者である宗教法人に対し、土地の管理責任を問う損害賠償請求訴訟を伊豆市は提訴する方針とのことです。

伊豆市は、硬軟の両面で不法投棄物に対して迅速な対応を取っていますが、これも市長がリーダーシップを発揮しているためであろうと思われます。

さて、「伊豆市長は、なぜこのような決断と行動ができたのだろうか?」という疑問が湧きましたので、菊地豊市長のプロフィールを拝見し、

<略歴>
昭和56年3月 防衛大学校卒業
昭和56年3月 陸上自衛隊入隊、幹部候補生学校
平成 5年5月 国連モザンビーク平和維持活動
平成 6年8月 ドイツ連邦軍指揮大学校
平成12年6月 在ドイツ日本国大使館防衛駐在官
平成15年8月 第5普通科連隊長
平成17年4月 内閣官房内閣衛星情報センター主任分析官
平成19年1月 陸上自衛隊(1等陸佐) 退職
平成20年4月25日 伊豆市長 就任
令和 2年4月25日 伊豆市長 4期目

とあり、陸上自衛隊出身であり、なおかつ「第5普通科連隊長」という経歴を見て、「なるほど!このご経歴を勤め上げた人であれば、陣頭に立つことも厭わないであろう」と、一人で納得してしまいました。

Wikipediaで調べてみると、
「連隊長」は「1等陸佐」で、他国の軍事組織であれば「大佐」に相当する階級とのことです。

現場にある比較的大規模な組織をトップとして統括した御経験が、市長としてのリーダーシップの礎にもなっているのでしょうね。

産業廃棄物の不法投棄に対する法的な対抗手段が限られている中、基礎自治体の首長として最善の努力を続ける伊豆市長の姿勢は、明るいニュースの少ない昨今では、珍しく希望が持てるものになったのではないでしょうか。

なお、蛇足ではありますが、
伊豆市長の政治理念や市長としての活動実績についてはまったく存じませんので、今回の記事は、あくまでも「不法投棄物に対する首長としての姿勢」だけを評価しております。

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