PCB処理に関する罪と罰

気が付けば1カ月ぶりの記事更新となります。

世間様のことはいざ知らず、私の中では、「四半期ごとに新年を迎えた気になる」ことをルールとしておりますので、7月という夏季の始まりに伴い、これまでの季節の振る舞いを反省しつつ、リセットした気分で新たに励んでまいります。

「新年」の効用は非常に大きいものがありますので、皆様にもお薦めです(笑)。

記事更新を停止している間も、日々廃棄物関連のニュースだけは収集しておりましたので、少し古い記事になりますが、考えさせられた記事を1つご紹介します。

2023年6月16日付 朝日新聞 「有害な産廃処分を無許可業者に委託 市職員を戒告 区検も略式起訴

 人体に有害なポリ塩化ビフェニール(PCB)を含む産業廃棄物の処分を無許可業者に委託したとして、島根県雲南市は15日、市の総合センターに勤務する40代の男性職員ら2人を戒告の懲戒処分にし、発表した。処分はいずれも8日付。

 市によると、男性職員は2020年5月、PCBを含む変圧器やコンデンサーの処分を、島根県知事の許可を受けていない同市内の電気工事業者に委託。保健所に報告後、無許可業者だったことが判明したという。

市役所職員が、今さら無許可業者に処分委託をしてしまうという、ちょっと考えられないレベルの不祥事です。

PCB廃棄物の保管届を長年提出していたはずですから、雲南市役所が、PCB廃棄物の正しい処理ルールを認識していなかったとは思えないからです。

地方自治体としては、PCB廃棄物の処理に関して、
「業者の選定基準」や「業者との契約方法」、「業者への発注方法」等の詳細を、必ず事前に決めていたはずです。

もちろん、ルールを守るかどうかは人間次第ではありますが、法律を遵守する義務がある地方自治体としては、「職員の意識任せ」で良いはずはありません。

組織内の決裁手続きで、複数の人の目を通して職員のルール違反行為を防ぐことになってはいますが、決裁判を押した人間に法律の知識が無い場合は、「無意味な承認手続き」と化していたのかもしれません。

いずれにせよ、「規定の整備」と「内部チェック」は、遵法体制推進のために欠くことのできない両輪となりますので、各組織において、不断の意識と取組みを継続したいところです。

地方自治体として一番よろしくなかったところは

 市は21年1月、業者の産廃保管場所などでPCB濃度を調査。その結果、「人体や環境への影響は極めて少ない」と判断し、事案を公表していなかった。

という部分。

「環境被害の有無」ではなく、
「無許可業者にPCB廃棄物処理を委託した」ことこそが問題の本質であったことを、市当局が認識していなかったことになるからです。

問題の本質がわかっていないと、事後の収束方法が当然不適切になるという、典型事例と言えましょう。

「法律違反をした個人を罰すれば終わり」では、再び同種の事件が起きる構造的な欠陥に目をつぶることになりがちです。

さて、無許可業者への委託は、廃棄物処理法上も、PCB特措法上も重大な犯罪行為であることは間違いありませんが、
同種の事件においては起訴すらされないケースが多いことから考えると、

雲南区検は今年5月、男性職員を廃棄物処理法違反罪で略式起訴し、雲南簡裁は罰金50万円の略式命令を出した。

「罰金50万円」とは、一地方公務員が背負う罰としては、極めて重いものでした。

幸い(?)、地方公務員法上、罰金刑だけでは免職にはなりませんが、公務員における「50万円」という金額は、「一月分の月収以上の大金」と思われますし、今後の市役所内での昇進はほぼ見込めないことを考慮すると、「重大な過失はあったが、積極的な悪意は無かった行為」に対する罰としては、重すぎるもののように思えます。

また、捜査関係者によると、無許可にもかかわらずPCBを含む産廃の処分を市から受託したり、産廃を譲渡・譲受したりしたとして、市内の電気工事業の60代男性と松江市の電気機器製造業の70代男性の2人についても、雲南区検が廃棄物処理法違反やPCB特別措置法違反罪で略式起訴し、雲南簡裁が罰金50万円の略式命令を出している。

処理料金をどれだけ取っていたのかは不明ですが、「営利目的」で無許可営業をしていた人も、同額の「50万円の罰金」を科されていますが、「営利目的」と「不注意」が同じ重さの罰ということに、個人的には釈然としないものを感じました。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ