不法投棄と不適正保管の境目

建設会社が廃材を不法投棄した容疑で、法人と役員が書類送検されました。

2023年7月5日付 チューリップテレビ 「「廃棄物ではない…薪として利用できるから」産業廃棄物処理法違反で書類送検も否定 県議選に出馬していた72歳会社役員 富山・立山町

通常、産業廃棄物の不法投棄、あるいは不適正保管であれば、富山県が告発を行うところですが、本件は、立山町が告発をしたとのこと。

町役場の業務性格上、刑事告発手続きに精通した職員がいるとは考えにくいので、「富山県との連係プレーか?」等、背後の動きを色々と妄想してしまいました。

さて、被疑者の言い分は、
・不法投棄ではなく、一時保管
・置いていた物は、ゴミではなく、薪木利用可能な木材
・保管量はそれほど大量ではない
という3点のようです。

このうち、「ゴミではなく、薪木利用可能な木材」については、ゴミの占有者の主観でしかありません。

仮に薪木であったとしても、それを「みだりに」捨てた場合は、不法投棄したことになります。

また、「(放置されていた)廃棄物が少量なら不法投棄にならない」わけでもありません。

尿を入れたペットボトルを捨てた容疑で逮捕された実例があることからも、量の多寡が問題ではないことがわかります。

実務的には、「一時保管か否か」が、このようなケースで論点となるテーマです。

テレビ報道された画像を見ると

※画像は上掲のチューリップテレビサイトより転載させていただきました。

空き地に漫然と放置、というよりは不法投棄された物にしか見えません。

もちろん、この感想は私個人の主観でしかありませんが、「保管」と主張したいのであれば、極めて紛らわしいやり方だったと言わざるを得ません。

こと廃棄物においては、「自社の土地だから、どんな置き方をしても許される」わけでもありません。

今回の報道は、「占有者の主観」と「世間の常識」、「不法投棄」と「不適正保管」の違いを考える上では、非常に興味深い事例と言えます。

そこで、「不法投棄」と指弾されないような「適切な保管」を行うためのポイントを考えてみました。

第1 「周囲に囲いを設置」、あるいは「専用の保管容器内で保管」
第2 「廃棄物の飛散流出防止措置を講じる」
第3 「廃棄物保管場所であることを示す掲示板を掲示」

いわゆる「産業廃棄物の保管基準」を引用しただけのポイントですが、どれも簡単にできる内容です。

具体的には、囲いを設置できないのであれば、「保管コンテナ」を敷地に置き、そのコンテナ内で廃棄物を保管する。

野ざらし、雨ざらしにならないように、ふた、あるいはシート掛けを厳重に行い、廃棄物を飛散流出させない措置を取る。

もちろん、囲いやコンテナ容器の高さを超える量になるまで、廃棄物を滞留させないことも必要です。

報道された画像を見る限り、この画像だけでは、
「不法投棄」と断定することはできませんが、
上記の第1から第3の全てを欠いた「不適正保管」には当てはまるように思えます。

元々、廃棄物の世界では「自分の土地だから、何をしようと自分の自由」ではなく、廃棄物の置き方からして法律で基準が定められています。

他者からの視線を意識するためにも、「保管基準」を意識し、他者から誤解されない保管を行ってください。

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