もはや許可取消をすべきでは
屋外に大量放置された産業廃棄物から出火し、鎮火まで約1ヶ月も掛かったという事件が福岡県で起こりましたが、福岡県は、その出火元の処理業者に対し、許可取消ではなく、異例の長期間に及ぶ事業停止処分を科しました。
2017年7月12日付 福岡県発表 「産業廃棄物処分業者に対する行政処分について」
2 行政処分の概要
(1)概 要 産業廃棄物処分業の全部停止(停止期間の開始日の前日までに搬入した産業廃棄物の処分を行う場合を除く。)
(2)期 間 処分の日から平成30年3月31日まで(産業廃棄物処分業許可申請書に記載された産業廃棄物の保管容量を下回り、産業廃棄物処分業の許可基準に適合した場合は、その期間を短縮する。)
(3)処分年月日 平成29年7月12日3 行政処分の理由
法14条の3第1号及び第2号による事業の停止命令の要件に該当
○ 法12条第1項(産業廃棄物処理基準)違反
保管している産業廃棄物の量が、産業廃棄物に係る処理施設の1日当たりの処理能力の14倍を超過しており、産業廃棄物の処分の基準(保管基準)に適合していない。○ 法14条第10項第1号(産業廃棄物処分業の許可基準)不適合
保管している産業廃棄物の量が、産業廃棄物処分業許可申請書に記載された保管容量を超過するとともに、飛散・流出のおそれが認められ、産業廃棄物処分業の許可の基準に適合していない。
日数を限らず、年度末までの約9ヶ月間の事業停止処分というのは非常に珍しいやり方です。
ここまで長期間に及ぶ事業停止処分を私は見たことがありません。
また、万が一、業者が自発的に産業廃棄物の処理を進め、保管基準に適合した状態になった場合は、事業停止期間を短縮するというやり方も初めて見ました。
行政法的には、行政処分に解除条件を付けることも可能なようですが、「産業廃棄物処分業許可申請書に記載された産業廃棄物の保管容量を下回り、産業廃棄物処分業の許可基準に適合した場合は、その期間を短縮する。」という文章を、解除条件とみなせるかどうかは疑問に思いました。
あるいは、保管容量が適正になった時点で、福岡県自身が事業の停止処分を撤回するという方法もありますが、大変オリジナリティの高い行政処分事例と言えましょう。
ただし、被処分者である処理業者には、5年前の平成24年5月に、福岡県から産業廃棄物の大量保管を是正させるための改善命令が発出されていますので、5年間にも及ぶ長期間の改善命令違反の事実を鑑みると、「事業の停止処分」ではなく、「許可取消」の方が妥当に思えます。
「許可取消をすると、無許可状態になった業者に産業廃棄物の撤去をさせられない」という各地の地方自治体がよく使う常套句が、許可取消をしなかった理由かと思いますが、
5年待っても撤去をしなかった事業者が、しかも火災による損失を抱えながら、すぐに廃棄物の処理を進め始めるとも思えません。
火災時は周辺の生活環境を大幅に悪化させていましたが、幸いにも、鎮火後はそのような状態にはないようです。
もし支障があるのであれば、福岡県は業者に対し措置命令を発出しているはずですので。
« 「正解は一つ」ではないことの方が多い 雑品スクラップ保管場所の届出義務違反で懲役刑!? »
タグ
2017年7月14日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:行政処分