廃棄物処理業への参入障壁とは

2014年6月9日付の日経ビジネスオンラインに、興味深い記事が掲載されていました。 
アマゾンが獲得した“ゾンビ免許” 酒類販売制度に突きつけられた課題

 実は平成元年6月より前に取得された免許には、先ほど触れた「一般」や「通販」の区別がない。つまり、それ以前の免許を保有している者は、店頭でも通信販売でも、合法的にすべての酒類を売ることができる。むろんビール類もだ。

アマゾンが酒類の通信販売を始めるために、昭和時代に酒類小売業免許を取得した酒屋(法人)の経営権を取得したという記事です。

廃棄物処理業の場合は、酒類小売業免許と異なり、過去の許可が現代でもオールマイティに活用できるわけではありません。

しかし、廃棄物処理業界に異業種から参入する際には、アマゾンが酒類の通信販売に参入したのと同じ方法で、迅速に行うことが可能です。

当ブログでも、2014年5月23日付記事「産業廃棄物処理業者がM&Aをする際の手続き(前編 経営権の取得)」で、産業廃棄物処理業界に迅速に参入する方法を書いたところです。

そのため、個人的意見としては、
現在の廃棄物処理業界、特に産業廃棄物処理業界に対する異業種からの参入障壁は、法手続き上の観点からは「ほとんどない」
と言えるのではないかと考えています。

廃棄物処理業の許可を所持している法人の経営権を取得しさえすれば、今すぐ廃棄物処理業を開始できるからです。

廃棄物処理法及びその他の法律では、廃棄物処理業者の経営権の譲渡を禁止する規定は無いため、当事者同士の合意で自由に経営権は譲渡できます。

もちろん、欠格者が新たに経営陣に加わったとしても、その時点から許可取消の対象となりますので、暴力団関係者等が脱法的に廃棄物処理業界に参入することもできません。

「経営者や株主として表に出なければ参入できるのではないか?」という疑問もあろうかと思いますが、
警察の暴力団関係者のデータベースは非常に高い精度がありますので、黒幕的な欠格者についても、遅かれ早かれ警察当局の知るところとなり、行政へ通知がなされることになります。

話しを元に戻しますが、
「手続き的な参入障壁が無いことはわかった。しかし、各地で処分場の設置に関して住民との間で紛争になっている事例がたくさんあるじゃないか。」と考えている方が多いと思います。

その点については、実質的な意味においては、私もそのとおりだと思っていますが、
「廃棄物処理法が参入障壁になっているわけではない」ことにはご留意いただきたいと思います。

法人の場合は、一般廃棄物処理業であっても、経営権を取得できさえすれば、廃棄物処理法上の手続きを一切経ることなく、すぐに操業開始ができるからです。

では、今日の本題の、「廃棄物処理業への参入障壁とは何か?」ですが、

それは

「近隣関係者が寄せる廃棄物処理業への関心」と「近隣関係者の方との信頼関係」との相関関係で決まります。

一般的に、工業専用地域のように、隣接する関係者が工場等の事業所ばかりであれば、隣の土地で廃棄物処理業が行われることへの関心がそれほど高くありません。

そのため、関心が高くないということは、不安視もされていないということですので、工業専用地域では信頼関係を構築する努力の必要すらない場合もあります。

しかし、事業場の近隣に住居や集合住宅がある場合はそういうわけにはいきません。

廃棄物処理法上は、近隣住民の同意や合意は一切必要ありませんが、多くの自治体で近隣関係者との合意形成を図ることが求められている以上、「業許可の取得要件ではないので、説明会の開催を一切拒否する」と主張し続けるのは時間の浪費と言えます。

そこで、「参入障壁を一つずつ乗り越えていくためにはどうすれば良いか」ですが

まずは、いきなり「信頼してくれ」と言っても、それだけで信頼してくれる人はほとんどいませんので、事業内容を丁寧に説明し、廃棄物処理事業の安全性を理解してもらうしかありません。

「理解」を経てからでないと、「私の家の近所で事業をやっても良いですよ」という「許容」にはつながらないからです。
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その上で、真摯な説明姿勢を繰り返し見ていただくことが、事業者に対する信頼感の醸成につながります。

信頼感醸成のためのポイントとして、料理の「さしすせそ」と同様に、住民の方と接する際のキーワードを5つまとめてみました。
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完全に私個人の造語ですので、wakksと検索してもヒットしません(笑)。

2008年に初めて自主開催したセミナーで披露したキーワードですが、今改めて読み返すと、なかなか核心的なポイントを突いているのではないかと思いました。

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