排出事業者が合併した場合に契約書の書き換えが必要か

会社が吸収合併した場合、会社名が変わることになるので従来の産業廃棄物処理委託契約書を書き直さなければならないのでしょうか?

というご質問をよくいただきます。

世界での企業の生き残りをかけた合従連衡が進む昨今ですから、そのようなケースが今後も増えるものと思います。

自治体の中には、下記のようなFAQを掲載しているところがありますので、「合併の場合でも契約書の変更が必要なのか!?」と思われるかもしれません。
大阪府庁 産業廃棄物の処理委託FAQ より

Q50 契約内容に変更が生じた場合、変更契約が必要か?

A50
 会社名、代表者、本店所在地等の変更や吸収合併(存続法人となる場合)など軽微な変更の場合は、変更内容を記載した書面(覚書等)を作成し、双方が記名押印して契約書に添付しておいてください。また、産業廃棄物処理業の許可証の内容に変更が生じた場合は、変更後の許可証を契約書に添付してください。(収集運搬業についての政令市長の許可が、知事の許可へ一元化されたことによる変更を含む。)添付文書には、添付した日付を記入のうえ、双方が記名押印してください。この場合でも、契約更新時には新たな内容で契約書を締結するようにしてください。
 また、法人そのものの変更、有限会社から株式会社への変更、契約期間の変更、産業廃棄物の種類の変更、委託量の大幅な変更、最終処分の場所の変更など重要な変更の場合は、契約書を締結し直すようにしてください。処理料金の変更についても、契約書を締結し直すことが望まれますが、再生利用を委託する場合に再生品の市況の変動に伴い処理料金が頻繁に変更される場合などは、委託契約書には「処理料金は別途覚書による」と記載し、処理料金が変更される都度覚書を作成して契約書に添付しておく方法が考えられます。

しかし、委託者である排出事業者が合併などをした場合、契約内容に変更が生じない限り、法的には改めて契約をやり直す必要はまったくありません

その理由は、会社法妥750条で下記のように定められているからです。

(株式会社が存続する吸収合併の効力の発生等)
第七百五十条  吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
2~6 略

A株式会社がB株式会社を吸収合併し、B株式会社はA株式会社として存続することになった場合、
B社が締結した産業廃棄物処理委託契約の権利義務に関しては、当然にA社が権利義務を承継することになります。

また、廃棄物処理法でも、吸収合併後に契約をやり直さねばならないなどという規定もありません。

大阪府のFAQは、「法的要求事項として覚書を作成しなければならない」ではなく、「合併後の法人名称を明らかにする上で、覚書などを作成した方が望ましい」という意味だと思われます。

そのため、法的な責任としては、吸収合併後も契約内容に変更が一切生じないのであれば、契約書を書き直す必要はまったくありません。

ただし、実務的な面での利便性を考えると、処理業者の担当者のためには、会社合併により法人名称が変わったことをお知らせした方が良いのは確かです。

覚書の作成が義務ではない以上、委託者から受託者への「合併により会社名が変わります」という一方的な通知文書で用は足ります。

通常は取引先にそのような通知をするのが常識だと思いますので、
処理業者に通知をする際は、「このお知らせを貴社で保存している委託契約書と一緒に保存してください」と一筆書いておけば十分です。

同時に、自社が保存している委託契約書にも、同じ文章を添付しておくと、後で担当することになった人にもわかりやすいと思います。

以上、排出事業者の合併の場合の解説となります。

処理業者が合併した場合はまったく違った結論になりますので、次の機会に解説いたします。

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