下請が自ら運搬する場合のマニフェスト交付者は誰?
顧問先処理企業からのご質問で、ハタと一瞬悩んだものがありましたので、ブログでシェアしておきたいと思います。
2010年改正で、第21条の3という条文が新設され、第3項で下請の自ら運搬できる規定が設けられました。
建設廃棄物の排出事業者は「元請業者」であることが原則ですが(第21条の3第1項)、
一定の範囲の工事で、少量の廃棄物を運ぶ場合のみ、下請の廃棄物とみなして運搬することができるという規定です。
さて、ここから実務的な話になりますが、
下請が自ら運搬する場合、委託契約は、元請と産業廃棄物処理業者の間で契約書を作成することになりますが、マニフェストの交付者は誰になるのでしょうか?
排出事業者であり、委託契約の当事者である「元請」と考えるの正論だと思います。
しかし、環境省が平成23年3月17日付で発出した「産業廃棄物管理票制度の運用について」では、
(4) 法第21条の3第3項に基づき下請負人が産業廃棄物を自ら運搬する場合
この場合においても、下請負人が自ら運搬する産業廃棄物の排出事業者は元請業者であることから、当該産業廃棄物に係る管理票は、元請業者が交付すること。なお、元請業者が下請負人を経由して受託者に管理票を交付することは差し支えないが、下請負人は管理票の写しの送付、保存等の義務は負わないこと。
なお、下請負人が産業廃棄物を自ら運搬する場合において、元請業者が下請負人に運搬の委託をしているわけではないことから、元請業者が自ら運搬する場合と同様、「運搬受託者」及び「運搬の受託」欄に下請負人の氏名等を記入する必要はないこと。ただし、元請業者が下請負人を経由して受託者に管理票を交付した場合には、「交付を担当した者の氏名」欄には、当該交付を担当した下請負人の氏名を記載すること。
と、交付担当者には、下請業者の氏名を書くこととしています。
しかし、2010年改正に関する環境省のQ&Aでは、
Q11.法第21条の3第3項の適用を受けて下請負人が運搬を行う場合、処分の委託に係るマニフェストは下請負人が交付すればよいのですか。
A11.この場合であっても、元請業者がマニフェストを交付する必要があります。
とされており、通知の内容と矛盾するQ&Aが掲載されています。
ひょっとすると、「いや、通知の内容は交付担当者の記載方法を説明しているだけで、元請が交付しなければならないという意味では一緒なのだ」という論理なのかもしれません。
しかしながら、交付担当者という日本語は、「マニフェストを交付する権限と責任を持った担当者」と解する方が素直だと思いますので、3月17日付の通知の論理の方がおかしいと言えそうです。
また、Q&Aの最終更新日が「平成23年5月18日」と、通知を出した後にアップデートされている点にも注目したいと思います。
この時点で、環境省の見解が変更となり、最新の見解をHPで公開し直したと受け止めることもできそうです。
ただ単に、環境省の担当者が異動になっただけで、省としての見解に変更があったわけではないのかもしれませんが。
結論としては、個人的には、下請の自ら運搬の場合であっても、元請業者が交付担当者としてマニフェストを交付すべきと考えます。
交付担当者の記載自体は些末なことなのかもしれませんが、
契約の当事者ではない下請が、自由にマニフェストを交付して運搬まで行うというのは、
法律的には「悪夢」以外の何者でもありません。
万が一、下請が不法投棄をした場合、詰め腹を切らされるのは元請なのですから。
こういう疑問が生じた場合、環境省や自治体に問い合わせ、答えを聞いただけで満足する人が多いのですが、
上述したように、同じ環境省であっても、矛盾した内容で文書を出すことがあるくらいですから、他人の答えを鵜呑みにするのは危険、あるいは怠慢と言えます。
重要なのは、自分自身の頭で考え、常識や制度趣旨と照らし合わせたうえで、妥当と思われる結論を導き出す努力です。
ゆえに、当ブログも盲信してはいけません(笑)。
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2012年4月6日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:産業廃棄物管理票(マニフェスト)