報告徴収に対する義務違反で逮捕

記事の表現が不正確であるため、ミスリードしている可能性がありますが、おそらく報告徴収に対する義務違反で逮捕されたものと思われますので、それを前提として解説をします。

産経ニュース 県への廃棄物処分報告を拒否 容疑の土建業者逮捕 千葉県警

 産業廃棄物処理の際に義務づけられている県への報告を拒否したとして、県警環境犯罪課と市原署は、廃棄物処理法違反容疑で、容疑者を逮捕した。同課によると、容疑者は「産廃ではなく残土なので報告義務はない」と容疑を否認している。

 同課によると、産業廃棄物か、その疑いがある物を処分する際、排出元や運搬業者などを県に証明、報告する必要があるが、容疑者は「先方に迷惑がかかる」などと示さなかった。

 逮捕容疑は昨年9月上旬から10月7日にかけ、市原市勝間にある内縁の妻名義の資材置き場に大量の土砂のようなものを廃棄。県から繰り返し報告を求められたが拒否した上、同14日の期限までに報告をしなかったとしている。

 同課によると、容疑者は建設業者などから、ダンプ1台分5千円で廃棄物処理を請け負っていたが、中には産廃である汚泥を取り扱う業者のダンプも出入りしていたことが確認されていた。

2段落目の
「産業廃棄物か、その疑いがある物を処分する際、排出元や運搬業者などを県に証明、報告する必要があるが、容疑者は「先方に迷惑がかかる」などと示さなかった。」
が、一番不正確です。

なぜなら、産業廃棄物を処分するたびに、行政に対して排出事業者その他を証明、報告する義務など、廃棄物処理法には規定されていないからです。

念のため、千葉県の条例も調べましたが、千葉県条例でもそのような規定はなさそうです。

現実的に考えるとすぐわかることですが、産業廃棄物を処分するたびに行政にそれを報告させると、行政はその報告の受付事務だけでパンクします(笑)。

それに、そんな報告をする義務があるならば、マニフェストを運用する意味がまったくありません。

こうして考えると、記事が言いたかったことは、
「報告徴収に対する義務違反」で逮捕された、ということだと思われます。

廃棄物処理法第18条第1項

(報告の徴収)
 都道府県知事又は市町村長は、この法律の施行に必要な限度において、事業者、一般廃棄物若しくは産業廃棄物又はこれらであることの疑いのある物の収集、運搬又は処分を業とする者、一般廃棄物処理施設の設置者(市町村が第六条の二第一項の規定により一般廃棄物を処分するために設置した一般廃棄物処理施設にあつては、管理者を含む。)又は産業廃棄物処理施設の設置者、情報処理センター、第15条の17第1項の政令で定める土地の所有者若しくは占有者又は指定区域内において土地の形質の変更を行い、若しくは行つた者その他の関係者に対し、廃棄物若しくは廃棄物であることの疑いのある物の保管、収集、運搬若しくは処分、一般廃棄物処理施設若しくは産業廃棄物処理施設の構造若しくは維持管理又は同項の政令で定める土地の状況若しくは指定区域内における土地の形質の変更に関し、必要な報告を求めることができる

赤字で書いた部分のキーワードが、産経ニュースの記事中にも現れていますので、おそらくはこのことかと。

容疑者は、「残土だから産業廃棄物ではない」として、報告徴収に対する報告を行っていないようですが、
容疑者の認識としてはそうだったとしても、上記のように、「産業廃棄物の疑いがある物」は報告徴収の対象になりますので、やはり法律違反です。

罰則としては、廃棄物処理法第30条により「30万円以下の罰金」になります。

「残土だから報告義務なし」ではなく、
「報告によって、残土であることを証明」しなければならなかったのです。

千葉県から改善指導がなされたのは昨年の10月頃のようですので、半年経過後の立件となります。

半年の間に、警察による内偵調査が実行され、確実に立件できるという確証が得られたために立件に踏み切ったものと思われます。

土砂などの具体的な放置量が書かれていませんが、相当大量の放置量に達しているものと思います。

行政OBとしては、容疑者が有罪となるかどうかよりも、事件の後始末にかかる時間や経費の方が心配です。

「ダンプ1台あたり5,000円」というのが事実であるならば、破格の安値と言わざるを得ません。

処理を委託した排出事業者も厳しく追及されるのは間違いありません。

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