「あわせ」or「みなし」

最近、多くの自治体の焼却施設で、産業廃棄物の持ち込みを断られるケース
が増えています。
「え!自治体の焼却場で産業廃棄物を受け入れてくれないのは当り前じゃな
いの!?」
一般的にはそのとおりです。
特に、建設系廃棄物や汚泥などの、一度に大量に発生する産業廃棄物の場合
は、それを発生させた事業者の責任で処理しなくてはなりません。
しかし、会社の中で従業員が飲んだペットボトルや、廃棄するボールペンの
場合はどうでしょうか?
上記の「ペットボトル」や「ボールペン」などは、厳密に言うと、
産業廃棄物の「廃プラスチック類」にあたります。
そのため、法律の規定を杓子定規に運用すると、ボールペンを1本だけ廃棄
処分する場合でも、処理委託契約を締結し、マニフェストも発行しなければな
りません。
しかしながら、考えてみれば、普通の家庭生活でも、大量にペットボトルを
排出していますし、ボールペンだって捨てています。
普通の家庭生活から出た廃棄物=生活系廃棄物として、同じペットボトルで
あっても、市町村は処理してくれます
現実的に考えると、会社で発生したゴミを、完全に「一般廃棄物」と「産業
廃棄物」に分別することは不可能ではありませんが、非常に手間がかかります。
そこで、自治体の焼却施設では
「一般家庭から出るゴミと性状が同じ産業廃棄物なら、市町村の焼却炉で
一般廃棄物と合わせて焼却してあげましょう」ということで
産業廃棄物の「ペットボトル」や「ボールペン」を受け入れて処理してくれ
ていました。
もちろん、このような措置は、自治体が超法規的に好意で行ってくれている
のではなく、廃棄物処理法第11条第2項によって
「市町村は、単独に又は共同して、一般廃棄物とあわせて処理することができ
る産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物
の処理をその事務として行うことができる」
と規定し、市町村による、産業廃棄物処理の根拠づけをしています。
実務的には、市町村が、産業廃棄物の処理をすることを「あわせ産業廃棄物」
または「みなし一般廃棄物」と称しています。
一つ注意していただきたいのは、根拠条文の一番後ろの部分なのですが、
市町村が産業廃棄物を処理する根拠としては、
「行うことができる」であり、「行わねばならない」ではないことです。
言わば、あわせ産業廃棄物は、
市町村が民間事業者に対して恩恵的に施してあげるサービスであり、いつ
なんどき、市町村がそのサービスを打ち切ったとしても、民間事業者にはその
決定を変えさせる根拠が無いのです。
じゃあ なんで 今さら市町村はあわせ産廃の処理を中止するの?
それは、市町村の財源のひっ迫がもっとも大きな原因です。
ペットボトルの受け入れを止めたからと言って、市町村の焼却施設の運営
経費が劇的にカットできるわけではありません。
しかし、1本のペットボトルの背後には、ペットボトルの何十倍にも相当
する、本来なら産業廃棄物として処理されるべき「廃プラスチック類」が存在
しています。(例:包装袋、包装容器、その他諸々のプラスチック製品)
そのような一般廃棄物に紛れて搬入される産業廃棄物を削減できれば、
市町村としてはゴミ処理費用が大幅に削減できます。
大阪市の場合は、市内で発生する廃棄物の内訳は、
事業系(一般廃棄物と産業廃棄物の両方を含む)が6割
生活系が4割と発表しています。
仮に、事業系廃棄物の半分が産業廃棄物とすると、産業廃棄物の搬入を全部
止めるだけで、大阪市はゴミの「処理量」を3割も削減することができます。
「発生」量ではなく、「処理」量であるところが味噌です(笑)。
行政が受け入れを中止しようがしまいが、廃棄物は一定量発生し続けます。
しかし、産業廃棄物の受け入れを中止すると、廃棄物の処理量は大幅に削減
できます。
そうなると、
「我々の有難いご指導により、前年に比べて、●割も廃棄物の発生量を削減し
ました」
と胸を張って威張れます。
行政が受け入れない廃棄物は、民間で処理するだけなので、本当は「発生量
の削減」とは言えないんですけどね(苦笑)。
近畿地方では、大阪市、堺市、京都市などの政令指定都市において、市の
焼却場へ搬入する廃棄物には、産業廃棄物を混入させないよう規制が強化され
始めました。
全国すべての自治体が同様の規制をすぐ行うわけではありませんが、大都市
圏の自治体の場合は、遅かれ早かれ同様の規制を行っていくはずです。
「自治体はサービスを勝手に削減してケシカラン」と憤るよりは
「元々の姿(=排出者による産業廃棄物処理の原則)に戻っただけ」と受け
止めていただき、それへの対応を図っていただければと思います。
次号では、産業廃棄物混入の禁止措置に対応していく上での注意点をご解説
いたします。

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