管理会社に「できないこと」
「「危機をことさらに煽る」という商売」の続きです。
排出事業者ではなく、処理業者でもない第三者の呼称はブローカーでも良いのですが、今回はより一般的な表現と思われる「管理会社」に統一いたします。
まずは「できないこと」から先に明確にしておきましょう。
これは2点あります。
前回の記事でも書きましたが、第1は、「廃棄物処理の受託と再委託」です。
廃棄物処理の受託は、産業廃棄物処理業者その他の法令で認められた者しかできない行為です。
そのため、産業廃棄物処理業の許可を持たずに、排出事業者に「ウチ(管理会社)が一括して産業廃棄物を処理してあげますよ」と言えないわけです。
また、仮に産業廃棄物処理業の許可を持った管理会社であっても、管理会社が受けた収集運搬業務を、排出事業者の事前の承諾なく、他の収集運搬業者にやらせることもできません。
と、ここまでは廃棄物処理法だけの話です。
第2は、「非弁行為」です。
昨今よく聞く管理会社の横暴な行動のパターンとして、
「来月から廃棄物処理費を20%減額せよ。さもなければ、契約を解除する。なお、本件に関する交渉は当社(管理会社)が行うので、排出事業者に連絡することは認めない」というお達しを急に送り付けてくるものがあります。
このような管理会社による要求は、弁護士法で禁止されている法律事務の代理に該当します。
弁護士法第72条
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
非弁行為の詳細は、弁護士の方が解説したサイトがたくさんありますので、そちらをご参照いただくとして、プロ野球選手の年俸交渉代理人に弁護士が就任していることを思い出していただくと、上記の減額要求や交渉業務の受任が非弁行為になることを容易に理解いただけると思います。
当記事執筆の際に、わかりやすい非弁行為の実例はないかと検索したところ、
2017年1月17日付 産経WESTに「不正駐車の違約金回収で非弁活動 弁護士法違反で4人逮捕 京都」という記事がありました。
逮捕容疑は昨年3月18日、別の会社が運営する同市南区のコインパーキングで、利用規約に反して48時間以上にわたり駐車した軽乗用車に「10万円の違約金を徴収する」などと記した通告書を張り出し、車の所有者の同市の30代男性に支払い交渉し、和解金名目で2万4千円を振り込ませたなどとしている。
府警によると、同社は京都市内のコインパーキング運営会社から管理業務を受託。これまでに少なくとも毎月約20件の違約金請求を行い、平成27年12月から約半年間に違約金とみられる約170万円の入金が確認されているという。
管理会社も報酬を得る目的で交渉代理を行うわけですから、上記のニュースと同様の結論になることがおわかりいただけると思います。
以上2つの禁止事項だけでも、管理会社等の営業活動はかなり制限されていることがわかります。
自治体の規制権限が及ばないアウトローではないわけですね(苦笑)。
ただし、法律はそれを知っている者しか守ってくれないのも事実です。
あとは、管理会社その他のブローカーと向き合う側の意欲次第です。
« 「地中にある空間」の定義(平成4年8月31日付環水企183号・衛環246号より) 管理会社に「できること」 »
タグ
2017年1月18日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
カテゴリー:廃棄物管理の基本
トラックバック&コメント
トラックバック
コメント
管理会社にできないこと。興味深く読ませていただきました。 まさに現在、私が管理会社に言われている内容と一緒です。一つ質問なのですが、その廃棄物管理会社は自分達で数件、可燃ゴミをワゴン車で回収しているのですが、これは大丈夫なのでしょうか?
コメントいただき、ありがとうございました。
管理会社に収集運搬業の許可があり、その許可の範囲内で自ら運搬するのであれば、通常の収集運搬委託と同様に合法となります。
収集運搬業の許可が無い場合は、当然無許可営業で犯罪となります。