集合知≓衆愚
インターネット上の情報は手軽に検索でき、ある程度の量がすぐ集まるので、大変便利です。
しかしながら、誰でも簡単にその情報をアップロード可能なため、情報の精度が疑わしいものが多々あります。
情報の真偽を見極めるためには、昔以上に、情報に接する人間のリテラシーやリベラルアーツが重要な時代となっており、その努力を惜しむ人が増えると急激に“衆愚”に陥ってしまいます。
今回ご紹介するのはその衆愚の一例で、某環境Q&Aから表現を一部改変した上で転載します。
※本来なら、出典元のURLを記載すべきですが、逆に正確に引用しない方が投稿者の名誉に資すると思いますので、URLは掲載しません。
Q:産業廃棄物処理委託契約書には、委託する業者の「許可証の写し」を添付することが必要ですが、この「許可証の写し」とは「許可証の単なるコピー」でも大丈夫なのでしょうか。
それとも、行政で「許可証の写し」というものを別途発行しているのでしょうか。
まず、ビジネスリテラシーというか、一般常識としての「写し」の概念を知らない人が多いことに愕然としました。
言うまでもなく、「許可証の写し」とは「許可証原本の謄本、すなわちコピー」となります。
正しい答えは「以上終了」となりますが、その掲示板についた回答がまたヒドイ。
A-1:過去のQ&Aで参考になるものがあります。
として、紹介されている過去のQ&Aが以下のとおり。
>事業許可証入手についての質問です。
私のところでは、許可した市役所に電話してFAXで送ってもらってます。断られたことはありません。これがいちばん確実な入手方法だと思いますが。
つまり、回答者は、「許可証の写し」とは、行政が発行、または交付するものだと考えているものと思われます。
しかしながら、正確には、行政がFAXで送ってくれる「許可証の写し」は、「許可証の写しの写し」です。
なぜって?
許可証の原本は、行政ではなく、産業廃棄物処理業者が所持しているからです。
もっとも、写しに書かれた情報としては、「写し」であろうが、「写しの写し」であろうが同一であるため(改ざんしていない限り)、通常は問題になりませんが、あくまでも法律の条文にこだわるのであれば、産業廃棄物処理業者が謄本としてコピーしてくれたものが、「許可証の写し」となります。
したがって、一々行政を煩わして公金でFAXを送らせるのではなく、取引先の処理業者に「許可証のコピーを送って下さい」と頼めば済む話なのです。
だいたい、行政とは言え、各事業者の許可証を瞬時に取り出せるわけではありません。
記録をすべて電子管理でもしない限り、そんなことは不可能ですし、紙そのもので保存すべき対象の方が多いのが現実です。
そのため、電話を受けた行政官は、
ファイルのキャビネットに行き、
当該事業者のファイルを探し、
そこから許可証の写しを取りだし、
必要があればコピーをして、
FAX送付状を作った上でFAX送信する
という最低でも4つから5つの行動を取らなくてはいけません。
これだけの行動をするのに、あなたなら何分掛かるでしょうか?
最低でも10分から15分は掛かると思われます。
衆愚と堕した掲示板を見て、我も我もとFAX送信依頼が殺到するようになれば、その対応だけで一日が終わってしまう可能性もあります。
自分の無知を棚に上げ、行政に迷惑をかけ、人件費や通信費という税金を無駄遣いさせる行動は絶対にしないでいただきたいと、切に願います。
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2018年3月8日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:基礎知識