「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の制定による欠格要件への影響
ある業界専門誌を読んでいると、某団体の通常総会への取材記事の中で、
「5月29日以降、刑法208条の2の『危険運転致死傷罪』が事業者の不適格要件に加わる」という記述がありました。
「?」という疑問符しか浮かびませんでしたが、
情報を整理すると、記事の表現は10%程度だけ正しく、90%は誤りと言えます。
結論を先に書くと、
欠格要件の対象となる刑法の犯罪が新しく増えたわけではありません。
この点においては(事実の核心部分ですが)、記事の表現は誤りです。
では、正しい部分はどこかというと、以前は「刑法208条の3」だった「凶器準備集合及び結集罪」が、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の制定により、2014年5月29日以降は「刑法208条の2」になるという点です。
廃棄物処理法で「刑法208条の3」が出てくるのは、罰金刑でも欠格要件となる特別な犯罪の対象として、廃棄物処理法第7条第5項第四号ハの部分です。
禁錮刑以上の刑に処せられた場合は、根拠法が何であろうとすべて欠格要件の対象となります。
そして、従来から「危険運転致死傷罪」は懲役刑しかありませんので、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」以前から「危険運転致死傷罪」は欠格要件の対象となる犯罪でした。
現在は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が施行されていませんので、廃棄物処理法の条文も改定されていませんが、「凶器準備集合及び結集罪」の罰金刑が欠格要件となる根拠は下記のとおりです。
第七条 一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
5 市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号に適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
- 四 申請者が次のいずれにも該当しないこと。
- ハ この法律、浄化槽法 (昭和五十八年法律第四十三号)その他生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの若しくはこれらの法令に基づく処分若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律 (平成三年法律第七十七号。第三十二条の三第七項及び第三十二条の十一第一項を除く。)の規定に違反し、又は刑法 (明治四十年法律第四十五号)第二百四条 、第二百六条、第二百八条、第二百八条の三、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律 (大正十五年法律第六十号)の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から五年を経過しない者
では、肝心の「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」とは何かについてですが、昨年の11月27日に公布されたばかりの法律です。
法務省 (継続案件)自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案
可決成立日 平成25年11月20日
公布日 平成25年11月27日法律第86号
官報掲載日 平成25年11月27日 (号外第255号)
施行日 公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日
新旧対照条文の22p目を見ていただくと、
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の制定により、
刑法の条文が下記のようにずれることがわかります。
(2014年5月28日以前)
刑法第208条の2 「危険運転致死傷罪」
刑法第208条の3 「凶器準備集合罪」だったものが(2014年5月29日以降)
「危険運転致死傷罪」は、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」に移行
刑法第208条の2 「凶器準備集合罪」
となります。
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」の制定理由や罰則の趣旨などは、静岡県警のサイトでわかりやすく解説されています。
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」制定のお知らせ
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2014年4月16日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
カテゴリー:法令改正