次の廃棄物処理法改正候補 Vol.6(企業グループ内処理の特例化 その2)

次の廃棄物処理法改正候補 Vol.5(企業グループ内処理の特例化 その1) の続きです。

前回の記事は、経団連からの「企業グループ内での廃棄物処理を自ら処理とみなしてほしい」という要望に対する環境省の回答を掲載して終わっていました。

環境省の回答を再掲します。

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上記の回答は2014年3月25日時点のものですが、この回答を見る限りでは、環境省は特例化することを明確に否定している ように見えます(少なくとも、筆者は最初そのように受け止めていました)。

しかし、「『自ら処理』と位置づけることは困難」という段落の下に、

仮にこれらの企業間における取引の実態を踏まえ、当該企業全体で排出事業者責任を共有することを担保できるのであれば、そのような制度について検討を行い得る。

という補足があります。

この補足が重要な布石として機能し、
その後の「規制改革会議 第3回及び第7回投資促進等ワーキング・グループ(以下、WG)」で、実際に環境省と経団連が細部の検討に入っていることが明らかにされています。

経団連の5年越しの宿願であったためか、かなり慎重かつ丁寧に検討を進めているという印象を受けます。

経団連が要望を出した理由は?

規制改革会議第3回WGでは、経団連は要望の主旨をこのようにまとめています。
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率直な感想としては、無理矢理こじつけた「説明のための説明」という印象を受けます。

実質的な理由としては、次の3つの理由が主要なもののようです。
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いずれも、「地球温暖化防止」といった取ってつけたような効果よりはマシな理由ですが、やはり説明になっていない部分が多いため、それぞれの理由ごとに筆者の簡潔な感想を付記しておきます。

分社化、グループ化したことにより、排出実態が変わらないにもかかわらず、それまで可能であった自ら処理ができなくなった。

⇒分社化やグループ化は企業経営効率化のためにその企業が勝手にやったことであり、それで都合が悪くなった部分が出てきたからといって、法制度の特例を求めるのは筋違いでは?

企業グループ内で処理する場合、現在は処理業許可を有する法人に委託しているが、企業グループ内での委託処理は、廃棄物処理で報酬を受け取る受託処理業者とは目的が異なり、自社処理に等しい。

⇒分社化した別法人を「お仲間」として扱うのは結構ですが、会社を切り分けた以上、「自社処理に等しい」などと都合の良い感傷的表現で論点をすり替えるのはいかがなものかと。

企業グループ以外の処理業者に処理を委託する場合、自社の製品廃棄物等の流出リスクが生じる。これを回避するため、現在は処分時に立会う等して対応している。

⇒処理業者と機密保持契約をするだけで、問題のかなりの部分が解決するのでは?また、仮に自社処理をしたとしても、内部の者の犯行で、製品が外部に流出する可能性は否定できないので、処理業者のみを製品流出の原因者として位置づけるのは不適切では?

と、筆者には、この要望は検討する価値もないものに見えておりましたが、記事の冒頭で述べたとおり、環境省としては頭ごなしに門前払いをするつもりはなく、経団連と詳細の検討に入っている模様です。

(続く)

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