環境省、委託基準の検討業務を外注予定(官僚は忙しいのだ)

2016年5月13日付で、環境省から「平成28年度産業廃棄物処理委託基準の検討業務 [総合評価落札方式] 」が公表されました。

通常なら入札情報を当ブログで取り上げることはしないのですが、法令改正に関係しそうな案件であるため、初めて取り上げます。

公表ページ自体は通常の入札情報を掲載しているだけですが、
そこからリンクしている「仕様書等」に、「産業廃棄物処理委託基準の検討業務」と、実務的にも影響がありそうなテーマが挙げられています。

仕様書の詳細を下記に転載します。

1.業務の目的
 平成22年に改正された廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という )が施行されてから本年4月で5年が経過し、附則に基づき、政府において廃棄物処理法の施行状況について検討する必要がある。これを機として、生活環境保全上の支障の発生の未然防止を更に推進するために、我々の生活の変化・多様化に伴う廃棄物の質、量、排出状況、処理状況等の変化を踏まえ、廃棄物をめぐる社会情勢の変化に即した制度の整備を行う必要がある。

 本業務はこの整備の一つとして、廃棄物処理法で規制されていない有害物質に着目し、廃棄物処理法に基づく排出事業者の産業廃棄物の処理に係る委託基準(以下「委託基準」という。)について検討することを目的とする。

「社会情勢の変化に即した制度の整備を行う必要がある。」というくだりに、ほんの一瞬期待をしてしまいましたが、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の区分に手を付けるわけではなく、あくまでも特定の有害物質を含んだ産業廃棄物の委託基準の検討を行うだけのようです。

もうこの2段落だけで鮮やかに期待を裏切られてしまいましたが、念のため、仕様書の詳細も見ておきます。

2.業務の内容
(1)情報伝達義務をかける必要性が高い有害物質の抽出
 各法令(以下①~⑨を想定)で規制対象とされている有害物質(千数百物質)について、各法令における規定や取扱いを整理した上で、これらの有害物質のうち、委託基準として、その含有有無について情報伝達義務をかける必要性が高い有害物質を抽出(数百~千数百物質を想定)する。
 また、バーゼル条約附属書Ⅰに掲げられている有害廃棄物及び附属書Ⅲに掲げられている有害特性と、各法令の有害物質及び廃棄物処理法で規制されている有害物質との関係についても対照表等で整理すること。
 なお、本業務については平成28年7月29日までに中間報告を行うこと。
① 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成十一年七月十三日法律第八十六号)に規定される第一種指定化学物質【約460物質】
② 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和四十八年十月十六日法律第百十七号)に規定される第一種特定化学物質【約30物質】
③ 毒物及び劇物取締法(昭和二十五年十二月二十八日法律第三百三号)に規定される毒物及び劇物【約500物質】
④ 労働安全衛生法(昭和四十七年六月八日法律第五十七号)第五十七条に規定される表示等の義務がかかる物質【約100物質】
⑤ 労働安全衛生法第五十七条の二に規定される文書の交付等の義務がかかる物質【約630物質】
⑥ 特定化学物質障害予防規則(昭和四十七年九月三十日労働省令第三十九号)に規定される特定化学物質【約50物質】
⑦ 有機溶剤中毒予防規則(昭和四十七年九月三十日労働省令第三十六号)に規定される有機溶剤等【約50物質】
⑧ 消防法 (昭和二十三年七月二十四日法律第百八十六号)に規定される危険物【約50物質】
⑨ 高圧ガス保安法(昭和二十六年六月七日法律第二百四号)に規定される高圧ガスが充填された容器等
(2)有害物質を含有する廃棄物の処理における留意すべき事項の整理
上記で抽出された有害物質については、厚生労働省が公開する「GHS対応モデルラベル・モデルSDS」等を参考にして、その物性や有害性等からの物質群(1つの化学
物質に対して重複可)に区分する。さらに、「廃棄物情報の提供に関するガイドライン第2版」(平成25年6月環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部)添付資料3に示される「特別注意事項」、参考資料5に示される「対策」等を参考にして、有害物質を含有する廃棄物の処理に当たり廃棄物処理業者が留意すべき事項を物質群毎に整理する。
 なお、検討に当たっては、関係者ヒアリングを実施し(対象者:排出事業者・廃棄物処理業者等、対象地:国内、回数:2回、人数:2名程度を想定)、現在の廃棄物実態を踏まえて行うこと。
(参考)廃棄物情報の提供に関するガイドラインについて
http://www.env.go.jp/recycle/misc/wds/index.html
(3)廃棄物処理制度専門委員会の資料案の作成
 上記委託基準化に向けて、中央環境審議会の下に設置される廃棄物処理制度専門委員会に提出する資料案(主に上記の業務成果をまとめたもの)を作成する。
(4)その他
 上記の検討に当たっては、電話、メール等により有識者(2名程度)の意見を聴取しつつ、環境省担当官の指示に従い、作業を行う。

検討の対象となる化学物質が千数百種類もあり、そのうち、排出事業者と産業廃棄物処理業者の間で情報共有を図った方が良いと思われるものを2017年3月までに抽出する、というのですから、なかなかハードな業務に見えます。

形式的には入札の形を取っていますが、事実上委託先は1社に内定しており、その1社に仕様書を書かせたのではないでしょうか?(笑)。

何を契機としてこのような検討を進めるのかはわかりませんが、WDSの記入項目に新たな化学物質が加わるようなイメージでしょうか?

「法律上の規制対象物質を増やす」場合は、有識者による審議会を招集し、そこに諮問をするべき(実際、そうされています)ですが、
今回のケースでは、「委託基準の検討業務」とされながらも、実質的には「委託基準」ではなく、「有害な含有物質に関する情報提供方法」の検討のように見えます。

もしそうなのであれば、今回の委託業務は、規制行為そのものではなく、ガイドライン的な指針をまとめるだけに過ぎないため、環境省内ですべてを検討する必要は無いとも言えます。

1社でも多くの企業が入札し、委託料が1円でも安くなれば良いのですが、「総合評価落札方式」だからそれも難しいかな?

結局のところ、化学物質のスクリーニングと、情報提供の必要性に応じたカテゴライズ業務のようなので、手間は掛かるものの、高度な化学知識までは要らないように見えます。

そうなると、化学専攻の現役大学生にアルバイトで取組んでもらうのが一番安くつきそうです(苦笑)。

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