附則の「検討」に注目してみる

「附則」とは、参議院法制局のHPでこのように説明されています。

参議院法制局 見落とせない附則

 法律の規定は「本則」と「附則」から構成され、本則には、法令の本体的部分となる実質的な定めが置かれるのに対して、附則には、本則に定められた事項に付随して必要となる事項が定められることとなっています。このように聞くと、附則に規定される事項はあまり重要ではないようにも思われてしまうかもしれませんが、附則にも本則に劣らないほど重要な事項が定められることが多々あります。

廃棄物処理法においても、「本則」が度々改正されていますが、その法律改正の際には、必ず「附則」も定められることになります。

今回は、その附則の中の「検討」条項に着目し、次の廃棄物処理法改正のタイミングを予測してみます。

「検討(条項)」とは、附則中に定例句のように置かれている規定ですが、先述した 参議院法制局 見落とせない附則 では、次のように解説されています。

附則に検討条項(見直し規定)が置かれることがあります。検討条項とは、法律の施行後一定の時期において、法律の施行の状況や社会情勢の変化等をみて検討を加えた上で、所要の措置を講ずることを政府等に義務付ける規定です。

廃棄物処理法が改正される際には、毎回「廃棄物処理制度専門委員会」が設置されるわけではありませんが、「バグ修正」ではなく、「バージョンアップ」とも言うべき改正を検討する際には、上記の「検討(条項)」に基づき、「廃棄物処理制度専門委員会」が設置され、丁寧に(直近の議論はそうではありませんでしたが 苦笑)議論が行われています。

まずは、2000年以降の「附則」の「検討(条項)」の規定内容を見ていきます。

1.平成12(2000)年改正

附則(平成12年6月2日法律第105号)

(検討)
第七条 政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律による改正後の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下この条において「新法」という。)の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

と、この当時は施行後10年という、現代の感覚からすると、非常に気長な見直し期間が設定されています。

2.平成15(2003)年改正

附則(平成15年6月18日法律第93号)

(検討)
第五条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、廃棄物処理施設整備計画(新法第五条の三第一項に規定する廃棄物処理施設整備計画をいう。)に係る制度について見直しを行うとともに、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

廃棄物処理法の「附則」においては、この時から見直し期間が「10年」から「5年」と半減しました。

3.平成16(2004)年改正

附則(平成16年4月28日法律第40号)

(検討)
第四条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

平成16年改正法の「附則」の表現は非常にシンプルです。

4.平成17(2005)年改正

附則(平成17年5月18日法律第42号)

(検討)
第七条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、新廃棄物処理法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新廃棄物処理法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

平成17年改正法の「附則」では、「新法」ではなく、「新廃棄物処理法」と、若干気負った(?)表現になっています。

5.平成18(2006)年改正

附則(平成18年2月10日法律第5号)

(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、第一条、第三条及び第四条の規定による改正後の規定の施行の状況等について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

平成15年から平成18年にかけて4年連続で法律改正がありましたが、平成18年改正法の「附則」も非常にシンプルですね。
前年の「シン廃棄物処理法」の革新性が際立ちます(笑)。

「廃棄物処理制度専門委員会」の設置

さて、上記の1から5までの法律改正においては、「廃棄物処理制度専門委員会」は設置されていませんでした。

平成20(2008)年に至り、
「中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会」に、「廃棄物処理制度専門委員会」が設置され、

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に基づく廃棄物の排出抑制、適正な処理等に関する事項について検討

が行われることになりました。

なお、平成20年というタイミングで設置された理由として、第1回廃棄物処理制度専門委員会では、

平成9年に改正された廃棄物処理法が施行されてから10年が経過しており、本改正法の附則に基づき、政府において法の施行状況について検討を加えることとされており、さらに、平成12年、15年、16年、17年、18年の累次の改正法の附則に基づき、今後、必要に応じて順次検討を行うべき状況にある。

と説明されています。

つまり、バージョンアップと呼ぶべき大規模な廃棄物処理法改正としては、
平成3年
平成9年
そして、下記の平成22年という位置づけになろうかと思います。

6.平成22(2010)年改正

平成20年から平成22年にかけて、合計13回の審議が行われ、その成果が平成22(2010)年改正へと結実しました。

附則(平成22年5月19日法律第34号)

(検討)
第十三条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

平成22(2010)年改正法の附則は、平成16(2004)年改正時のものと同一のシンプルな表現へと回帰しました。

7.平成27(2015)年改正

附則(平成27年7月17日法律第58号)

(検討)
2 政府は、この法律の施行後適当な時期において、この法律の規定による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

平成27年改正は小規模なものでしたので、「附則」も簡潔になっています。

8.平成29(2017)年改正

平成22年改正法の施行は、平成23年4月1日からでしたので、平成23年の5年後となる平成28年6月に、「廃棄物処理制度専門委員会(シーズン2)」が設置され、廃棄物処理法改正の審議が始まりました。

なお、「シーズン2」は、筆者個人が付けた名称であり、オフィシャルな呼称ではありません。
個人的には、平成20年に招集された「シーズン1」の有識者の方が好みです(笑)。

附則(平成29年6月16日法律第61号)

(検討)
第五条 政府は、附則第一条第二号に規定する規定の施行後五年を経過した場合において、新法の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、新法の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

平成29年改正法の施行日は「平成30(2018)年4月1日」です。

そのため、次の「廃棄物処理制度専門委員会(シーズン3)」が設置されるのは、早くても令和5(2023)年以降と予想できます。

残念ながら、2022年度中は、廃棄物処理法改正の動きはまったく無さそうです。

なお、参考までに、令和元年度の改正法附則の「検討(条項)」も掲載しておきます。
附則(令和元年6月14日法律第37号)

(検討)
第七条 政府は、会社法(平成十七年法律第八十六号)及び一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)における法人の役員の資格を成年被後見人又は被保佐人であることを理由に制限する旨の規定について、この法律の公布後一年以内を目途として検討を加え、その結果に基づき、当該規定の削除その他の必要な法制上の措置を講ずるものとする。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ