パンがなければお菓子を食べればいいじゃない?

「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」は、マリー・アントワネットが飢えで苦しむフランス国民に言った言葉とされていますが、彼女が言った言葉として後世になってから脚色されたというのが真実のようです。

しかしながら、いかにも王族の人間が言いそうな、権力者の持つ驕りが感じられるという点では秀逸な脚色です。

いきなりマリー・アントワネットを持ち出した理由を説明しなければなりません。

昨日(10月9日)は、東京で開催された環境省・経済産業省の小型家電リサイクル制度小委員会を傍聴してきました。

その中で、環境省から、小型家電製品のリサイクルを実際に行う事業者の認定基準「再資源化事業計画認定基準(案)」が提示されました。

そして、「広域性」として、
「隣接する3都道府県以上で事業を行うこと(北海道と沖縄県は例外)」
「事業区域の人口密度1,000人/km以下であること」 という2つの条件が提示されました。

環境省の口頭説明では、人口密度1,000人/km以下を達成するためには、「関東全域」「京都・大阪・兵庫+隣接県」という、大都市圏+隣接の県という組み合わせをしないと、認定が受けられないということになります。

3都道府県という条件は、小型家電を中間処理する際に、「日量40t以上の小型家電を集められるかが損益分岐点」という前提で、それらの物量が集められる条件として3都道府県とした、と説明されていました。

しかし、実際には、日々40tもの小型家電を処理し続けるのは非常に困難だと思われます。

一番のネックは、3県にわたる方々の回収場所から少量ずつの小型家電を集約する手間です。
自治体が持ってきてくれるのであれば問題ありませんが、認定事業者側が自治体へ回収に回るのが原則ですので、その手間を考えると気が遠くなります。

また、レアメタルの収量を増やしたいのであれば、中間処理よりも、手作業で部品を解体する方が良い場合が多々あります。

40tもの廃棄物を一気に破砕して、そこから有用物のみを取り出すことも可能ですが、それには億単位の膨大な設備投資が必要です。

環境省としては、小規模手解体という事業ではなく、「一気に中間処理」という大規模処理設備によるリサイクルしか考えていないようです。

複数の委員から3都道府県という条件の非合理性について質問されましたが、環境省は頑として考えを変えませんでした。

極めつけは、「広域に回収しなければ本制度で認定する意味がない。狭い地域で小型家電を回収したいのであれば、業許可を取れば済む話」と発言をされました。

ここでようやく冒頭の「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない?」につながります。

小型家電の多くは一般廃棄物ですから、各市町村から業許可を取ること自体が大変なのです。

その問題を一気に解決するためにも、小型家電リサイクル法が制定されたと理解しておりましたが、官僚の考えとしては、「許可制度があるのだから、許可を取ればいいじゃない」ということになるようです。

2013年4月からの法施行に向け、自治体と事業者双方ともに、前提となる情報が不足したまま手探りで事業の実現性を検討していくことになりそうです。

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