(第3回)321通知の分析(前段部分)

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今回から、「321通知」そのものに詳細な分析を加えていきます。

最初は、通知の趣旨を説明する前段部分について。

便宜的に、ブログでは段落番号を追記しますが、もちろん、通知そのものには段落番号は記載されていません。

第1段落の冒頭のあいさつ的な一文は除外します。

(第2段落)
 事業活動に伴って排出される廃棄物については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)第3条第1項において「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」とする排出事業者責任が規定されており、これまで、委託基準・再委託基準の順次強化、産業廃棄物管理票の全面義務化等により強化されてきたところである。

排出事業者責任の基本原則と、これまでの委託基準強化の動きが簡単にまとめられています。

誰でも知っている当たり前のことしか書かれていません。

(第3段落)
 しかし、平成28年1月、建設廃棄物について、下請け業者に処理の委託を無責任に繰り返し、最終的に処理能力の低い無許可解体業者によって不法投棄がなされた不適正処理事案が判明するとともに、同月、食品製造業者及び食品販売事業者が廃棄物処分業者に処分委託をした食品廃棄物が、当該処分業者により不適正に転売され、複数の事業者を介し、食品として流通するという事案が判明したところであり、不適正処理事案は後を絶たない。特に、食品廃棄物の不適正転売事案は食品に対する消費者の信頼を揺るがせた悪質かつ重大な事件である。

平成28年当初に起こった「ダイコー事件」と「建設廃棄物の不法投棄事件」を例とし、「不適正処理事案は後を絶たない」とかなり誇張したまとめ方をしています。

交通事故と同様、不適正処理事案がゼロになるということなどは現実的には有り得ません。

「後を絶たない」のは当たり前であり、むしろ昔よりも、不法投棄の量と件数ともに大幅に減少していることは環境省自身が言っていることです。

通知という公的な文書で、かように扇情的な表現を弄するのは不適切と言えましょう。

(第4段落)
 食品廃棄物の不適正転売事案を受け、平成28年3月に取りまとめられた「食品廃棄物の不適正な転売事案の再発防止のための対応について(廃棄物・リサイクル関係)」(平成28年3月14日環境省)において、食品廃棄物の転売防止対策の強化に取り組むこととされた。また、排出事業者に係る対策としての食品廃棄物の不適正な転売防止対策の強化に関して、平成28年9月、中央環境審議会において「食品循環資源の再生利用等の促進に関する食品関連事業者の判断の基準となるべき事項の改定について(答申)」が取りまとめられた。同答申では、排出事業者責任について、食品関連事業者(食品製造業者、食品卸売業者、食品小売業者及び外食事業者)による食品廃棄物等の不適正な転売防止の取組の具体的方向性に関連して、「食品関連事業者が、自らの事業に伴って排出された食品廃棄物等の処理について最後まで責任を負うとの排出事業者責任を重く再認識する」ことが必要であり、「排出事業者の責任において主体的に行うべき適正な処理業者の選定、再生利用の実施状況の把握・管理、処理業者に支払う料金の適正性の確認等の廃棄物処理の根幹的業務が地方公共団体の規制権限の及ばない(中略)第三者に任せきりにされることにより、排出事業者としての意識・認識や排出事業者と処理業者との直接の関係性が希薄になり、排出事業者の責任が果たされなくなること等が危惧」され、「そもそも廃棄物の処理には、不適正な処理をすることによって利益を得る一方で、重大な環境汚染を引き起こすという構造的特性がある。このため、排出事業者も、その事業活動に伴って生じた廃棄物の処理を委託する場合であっても、再生利用業者との信頼関係を基礎に、廃棄物処理の根幹的業務を自ら実施していく体制を整備する必要がある」等が指摘されている。

審議会の答申からの引用をしているだけの部分です。

「指摘されている」という、環境省自身の見解ではなく、御用学者その他の権威を利用し、環境省の主張であるかのように装う若干姑息な文章テクニックです。

ただし、この第4段落には、本通知の性質を示すキーワードが集まっており、「通知を出した意図」や「通知で触れたかった趣旨」を醸し出している段落となっています。

国語の勉強テクニックで言えば、間違いなくこの文章(通知)の要約対象となる段落です。

個別のツッコミどころを取り上げたいところですが、それは本通知への批判の基礎となるものですので、別の機会に改めて取り上げます。

(第5段落)
 また、平成29年2月の中央環境審議会の「廃棄物処理制度の見直しの方向性(意見具申)」においても、「排出事業者責任の重要性がすべての事業者に適切に認識されることが重要」であり、「排出事業者が、自らの責任で主体的に行うべき適正な処理事業者の選定や処理料金の確認・支払い等の根幹的業務を、規制権限の及ばない第三者に委ねることにより、排出事業者としての意識が希薄化し、適正処理の確保に支障を来すことのないよう、都道府県、市町村、排出事業者等に対して、排出事業者の責任の徹底について改めて周知を図るべき」とされたところである。

先の第4段落と同様、審議会答申からの全面的な引用となっています。

この段落も、本通知の性質を示すキーワードが集まっています。

「根幹的業務」や「規制権限の及ばない第三者」がそれです。

少しだけツッコミを入れておくと、
たしかに、「適正な処理事業者の選定」は、排出事業者の根幹的業務であるのは間違いありませんが、
「処理料金の確認・支払い」を根幹的業務と位置づける実務感の無さが泣けてきます。(´_`。)グスン

「料金の確認と支払い」は、根幹的業務などではなく、些末なやって当たり前の取引行為です。

誰もこの部分にツッコミを入れなかったことが不思議でなりません。

ただし、大変残念なことに、そのやって当たり前の行為を、実際にはやっていないフシギ排出事業者が多いのも事実ですが(苦笑)。

文章としての表現にはまったく同意できませんが、管理会社の弊害はそこにあるという指摘自体には賛同します。

あとは、「規制権限の及ばない第三者」という、意味不明で知性の感じられない日本語を公的文書に載せているところが許し難いです。

この点についても、後日取り上げたいと思います。

最終の第6段落は、単なる「周知のお願い」なので、省略します。

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