産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可状況(平成19年度)

11月4日に、環境省から「平成19年度産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況」が発表されました。

http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=16467&hou_id=13099 

毎年1回発表される統計なのに、ここ2年間は発表されないなと思っていると、一挙に18年度分と19年度分の2年分が発表されました。

今回は、統計的には最新の平成19年度分のみを解説します。

産業廃棄物処理施設の設置状況(≒日本全体の産業廃棄物処理能力)

ここ数年の傾向として、「木くず又はがれき類の破砕施設」と「廃プラの破砕施設」の2施設が、相変わらず増加しています。

建設廃棄物自体は減少しているのに、それを処理する施設は毎年増加しているため、

言ってみれば「供給過多」の状態であり、建設廃棄物処理費が年々下がるのも無理ありません。

3年前の2007年の状況で既にこうなっていますので、その後に起こった2008年のリーマンショック以後、廃棄物の取扱量が前年度比で30%(30%減ではなく、70%減!)という廃棄物処理企業が多いため、2010年の現在から振り返ると、苦境の前兆だったと言えます。

その意味では、この統計をもう少し早く発表していただきたかったですね。

汚泥の脱水施設については、廃止数が284件と非常に多く見えますが、

これはおそらく、平成17年3月25日付けの規制改革通知により、「汚泥の脱水施設」の取扱い基準が明確にされ

 ※ 規制改革通知(下記の2P目)
 http://www.env.go.jp/recycle/waste/reg_ref/tuuti.pdf

従来なら「産業廃棄物処理施設」とされていた脱水施設が、この通知によって「産業廃棄物処理施設ではなくなった」ため、通知の内容を知った事業者から、あるいは行政が気づいて指導をしている事業者から、廃止届の提出が相次いでいるものと思われます。

そのため、汚泥の脱水処理を担う機械が減っているわけではなく、法律的な位置づけが変わり、産業廃棄物処理施設としては存在しなくなっただけと考えられます。

2.産業廃棄物処理業の許可件数(≒処理市場の飽和度)

許可件数の推移
許可件数については、前年度比で4.5%となっています。

しかし、新たに処理業を始めるときに必要な「新規許可」件数は、収集運搬業と処分業のすべてにおいて、対前年度比で減少しています。

廃棄物処理施設の数は増えているのに、新規参入業者の数は落ち着きをみせているということは・・・・

既存の処理業者の多くが、幅広く顧客ニーズに対応していくため、処理施設の増強を図った
のかもしれません。

統計では、「新規許可業者が同時に処理施設を設置したかどうか」まではわかりませんので、これはあくまでも推測の域を脱しません。

実務で許可申請をやっている感覚からすれば、新規参入の業者の数もそこそこ多いように感じています。

 事業者の増加
   ↓
 競争の激化
   ↓
 零細事業者の撤退
   ↓
 事業者の絞込みが進む(寡占化)
 
 というのが世の中の常ですが、産業廃棄物処理業界は、いまどの段階でしょうか?

2010年現在、競争が激化しているのは事実ですので、今後は競争に耐え切れない零細事業者の撤退が加速するのでは、と考えています。

顧客開拓を図りながら、コスト削減を徹底し、厳しい競争を耐え抜く体力を今すぐ作り上げる必要があります。

3.行政処分件数の推移

取消処分件数の経年変化
許可の取消や事業の一部停止などの行政処分は、前年度よりも若干減りましたが、それでも771件もあります。

最近顕在化してきた問題としては、各自治体によって、行政処分の強弱が著しく異なるというものがあります。

ある自治体では行政処分が下されない案件が、別の自治体では簡単に許可の取消に発展しています。

最寄の自治体の行政処分傾向を注視し、ユニーク(?)な基準で処分を下す自治体の場合は、実際の操業状況を確認し、処分される可能性を洗い出してみる必要があります。

行政の考え方を変えさせるのは非常に困難ですが、
災害の発生を事前に予測し、それに向けてしかるべき対策を取ることは十分可能です。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

トラックバック

コメント

  1. 森田 章靖 より:

    よくわかる・・・#179興味深く読ませて頂きました。
    小職、素材製造業の本社部門で3R推進を担当しています。
    業務上、処理業者に訪問させていただくことも多いのですが
    旺盛な設備投資をなさっておられる業者さんもある一方、特にリーマン
    以降、処理するものが減って久しいという声もよく伺います。
     今後の予想ですが、競争が激化し、淘汰は進んでいくと思います。
     一方、廃掃法は事業者責務(第3条)があり、不法投棄に繋がれば
    排出元が改善命令の対象となりうる可能性が出てきます。
     そこで、排出元としての自己防衛のため、
     ①価格交渉成立の場合、契約を確実に変更すること
     ②マニフェストの戻り管理を強化すること
     ③処理先訪問時は、経営状況(処理量、仕掛量)の変化を確認
      すること
     を各生産拠点の廃棄物担当者に行うように要請しましたが、
    排出事業者のリスク回避という観点から、ご意見伺いたく。

  2. 尾上雅典 より:

    森田 章靖 様

    コメントありがとうございました。

     ①価格交渉成立の場合、契約を確実に変更すること
     ②マニフェストの戻り管理を強化すること
     ③処理先訪問時は、経営状況(処理量、仕掛量)の変化を確認
      すること

    2010年の廃棄物処理法改正を受け、委託先業者の処理状況の確認が努力義務となりました。

    そのための具体的な着眼点として、コメントいただいた3点は間違いなく入ってきます。

    その他のポイントとしては、「廃棄物の保管状況」や「『産廃運搬車』の表示が無い車が出入りしていないか」など、色々なものがありますが、

    まずは見るべきポイントを細かく例示し、それを徹底してもらうことから始めるべきですね。

    そのため、森田様がお書きになった内容は、理と法律の両方に適った手法だと思います。


コメントをどうぞ

このページの先頭へ