騙されないための唯一の方法⇒『地面師』

2018年12月に出版されたばかりの本なので、ご存知の方も多いかもしれませんが、今回は、不動産取引をめぐる詐欺集団の手口を解き明かした『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」をご紹介します。

実録ドキュメントのため、犯罪者が実名のまま掲載されており、非常に強い臨場感が漂っています。

買主側が売主の本人確認等をちゃんと行っていたにもかかわらず、「なりすまし」を準備されたり、偽造パスポートの行使等で、騙されるべく騙された詳細な手口の経緯が圧巻。

また、同じ人物が複数の詐欺事件に関与しているため、「またマイク(←偽名で生粋の日本人)が出てきたよ」と、思ったことも一度ならずでした。

地面師たちは、実際には不動産に関する権原が無いのに、「地主のなりすまし」を手配し、「実印を紛失した」と称し、新たに印鑑登録を行ったうえで、「登記済証」まで偽造できるそうです。

ここまでくると、「無から有を生み出す」にも等しい手練手管となります。

地面師たちに狙われると、「知らない間に自分の土地が他人に勝手に売却されている」という事態が容易に起こってしまいます。

「これは怖い!もう安心して夜も眠れなくなる」と一瞬思いましたが、
残念ながら、私には不動産を買う財産が無いし、地面師に狙われるほどの不動産を所有していないため、「まず狙われることはないな」と安心しました(笑)。

さて、不動産に関する本と単純にとらえるだけでは勿体ない本と思いましたので、廃棄物の委託取引に関しても応用できそうな気付きを書いておきます。

地面師たちは、公的書類を偽造する設備を有する印刷業者も抱き込んでいますので、本人確認書類を形式的にチェックするだけでは偽造を見抜けない場合が多いようです。

ただし、詐欺師たちは一日も早い現金化を望むことがほとんどですので、「2つの書類に記載された生年月日が違う」といった初歩的なミスをすることも多いそうです。

そして、どの詐欺事件にも共通するパターンとして、「今すぐ契約をしないと、他の買い手のものになりますよ」と契約を急がせる傾向にあります。

詐欺師であるかもしれない相手と対峙する我々としては、ここを逆手に取り、「契約を急がずに、じっくりと事実の裏付けをしていく」ことが唯一の防衛策ではないかと考えました。

「廃棄物に関する取引でそんなことあるのか?」と思いましたか?

多くはありませんが、実際にあります。

もう10年以上も前のこと
ある企業からの紹介で、「中間処理業許可を取りたい」という積替え保管業者を訪問しました。

準工業地域での立地のため、設置できる設備が小規模にならざるを得なかったのですが、社長は設備投資に関する不安を一切感じていませんでした。

その場に同席していた設備業者がこれまた胡散臭いオヤジで、「当社の技術は海外からも高く評価されている」と何度も繰り返すだけでした。

小規模設備の割にはどう考えても高い値付けがされていたので、その点を指摘すると、
「センセイ 心配いりまへんで。(設備業者の)紹介で、マカオの投資ファンドに出資してもらうさかいに。」
と、話がさらに胡散臭い方向に進んでいきました。

「マカオの投資ファンドって、『金太の大冒険』かよ!」と今ならツッコムところですが、

当時は警戒感しか湧き起らず、事業計画の目鼻が立つまでは、こちらも書類作成作業を行わないようにしました。

しかし、その後ほどなくして、その積替え保管業者は、建屋のみならず、敷地いっぱいに産業廃棄物を溜め込んだうえ、入口が閉鎖されていました。

俗に言う「夜逃げ」ですね。

そして、件の胡散臭い設備業者も、本店所在地であったボロい倉庫から姿を消しました。

もうおわかりですね。

誰が首謀者なのかはわかりませんが、「収集運搬代金」を受け取ったうえでの「計画倒産」です。

幸い、不動産とは異なり、産業廃棄物の場合は、億単位で騙されるケースはほぼ考えられませんが、
これが「事業地での放置」ではなく、「不法投棄」されていた場合は、
排出事業者にも責任追及が行われた可能性があります。

「契約や取引を急がせる」ケースがすべて詐欺目的というわけではありませんが、
詐欺目的の場合は、「今だけ」と言いつつ、契約や取引を急がせることがほとんどです。

我々善良な人間は、「取引を急がないこと」で、時間を味方につけて、相手の素性や主張の真偽をじっくりと見極めるしかありません。

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