有価物売却先の明記は必要か

中間処理業者との委託契約書に、中間処理業者が産業廃棄物から抽出した有価物の売却先を明記しないと、廃棄物処理法違反になるのでしょうか?

答を考えるために、委託契約書に関する法律の根拠を見てみましょう。

廃棄物処理法施行令第6条の2

四 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。

イ~ニ 略
ホ 産業廃棄物の処分(最終処分(法第十二条第五項に規定する最終処分をいう。以下同じ。)を除く。)を委託するときは、当該産業廃棄物に係る最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力
へ 略

と、「中間処理残さの最終処分場所」は、法定記載事項となっています。

そのため、中間処理残さではない「有価物」の売却先については、委託契約書に記載する義務は無いということになります。

もっとも、法的な義務はありませんが、当事者間の合意に基づき、「有価物の売却先」まで中間処理業者に記載してもらうこと自体は可能です。

ただし、個別の売却先の情報を記載する中間処理業者にとっては、「営業秘密」や「売却先が一社ではないので市況によって弾力的に変わる」という理由から、契約書に個別の売却先を書きたくないという場合があります。

それもよく理解できます。

それでは、排出事業者と処理業者のどちらの事情が優先されるべきなのか?

結論としては、当事者間の話し合いで決めることになりますが、契約実務の基本は、「書く必要が無いことは書かない」ですので、排出事業者側で「有価物売却先の情報が絶対に必要」という事情でもない限りは、「売却先の業種(例:鉄鋼業)」程度に止めておく方が合理的かと思います。

有価物として売却されているか疑わしいような場合は、取引先の中間処理業者に個別の売却先を質問し、売却事実の裏取りをすれば良いでしょう。

「契約書に記載しておきさえすれば何も問題は起こらない」ということは有り得ません。

大切なことは、契約書を免罪符のように有難がることではなく、
「『トラブルの未然防止』と『取引リスクの低減化』のために、契約書をどう使うか」です。

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