官僚的組織で法律違反が起こる背景

前回の記事「単なる贈収賄事件ではなく、組織的問題」では、ネクスコ西日本職員の収賄事件で発覚した、同社の廃棄物処理法違反を取り上げました。

ネクスコは、2005年に日本道路公団という特殊法人が分割民営化されたものです。

「道路の管理」を目的として設立された組織ですので、事務手続きに忠実な官僚的な団体です。

しかしながら、事務手続きに忠実なはずのネクスコであっても、無許可業者に廃棄物処理を委託するという、一番やってはいけない廃棄物処理法違反を簡単に起こしてしまいました。

今回は、なぜネクスコのような官僚的組織において、単純、かつ悪質な法律違反が発生したのかを考察します。

なお、この問題はネクスコのみに限定される話ではなく、権限と義務が個人ごとに細かく規定された企業にもあてはまる話となります。

理由1 許可内容の確認作業が事務手続きに盛り込まれていなかった可能性

先述したとおり、官僚的組織であるネクスコにおいては、事務処理規定に書かれていることを、組織全体で無視するという事態は考えにくいです。

おそらくは、通常の道路工事の場合は、ネクスコは「元請」ではなく、「発注者」という立場になりますので、「排出事業者」という立場になること自体が少ないのでしょう。

そのため、排出事業者の義務である、委託先業者の許可内容を確認する必要性すら認識していなかったと思われます。

その結果、廃棄物の委託処理手続きにおいて、委託先処理業者の許可の有無を確認するという手順が定められていなかったのかもしれません。

もっとも、産業廃棄物の排出事業者となる機会が少なかったとしても、ネクスコと言えども、一般廃棄物は常時排出していたことは間違いありませんが、
一般廃棄物の委託基準の中には、「許可業者等への委託」という一項が定められております。

「調査した結果、一般廃棄物の委託先の大部分は無許可業者だった」ということは、まさかありませんよね!?

理由2 事務手続き至上主義

ネクスコのみならず、役所や銀行、大企業の管理部門に共通する傾向ですが、事務手続きを遵守することのみに拘泥し、「そもそも、何のためにその手続きを守る必要があるのか」には注意を払わないことがあります。

もちろん、組織を円滑に回すためには、定められた事務手続きを愚直に守ることが重要な前提条件となりますが、
時代や社会情勢の変化に応じ、「本当に今でも必要な手続きなのか?」、あるいは逆に「現代社会では、もっと慎重に事務手続きを定めた方が良いのでは?」と、定められた手続きに疑問を感じることも大切です。

また、日々の業務を進めるにあたっては、「形式的要件の充足」のみを気にかけていると、一担当者の邪まな意向が手続きの陰に隠れてしまい、組織として重大な失態を犯すことにつながりやすくなります。

この手の悪事に対処するためには、書類審査を行う上司の「勘の良さ」か、「悪事を潜り込ませる余地が無いくらいに厳格な手続きを定める」ことで対処するしかありませんが、
上司という立場に就く人ほど、事務手続きに埋没することに疑問を感じにくくなります(そのような人格を身に着けたからこそ、組織内で出世できたわけです)ので、属人的な「勘の良さ」に頼るのは困難と言えます。

では、手続きを厳格にすれば良いかという話ですが、
そうすれば確かに不祥事の発生する確率はかなり減らせますが、事務処理に費やされる時間や手間がかなり増えることになります。

万能の解決策はありませんので、手続きを厳格に、そして明確にしつつ、技術革新によって手間や時間を同時に削減していくしかなさそうです。

理由3 権限分割のやりすぎ

昔とは異なり、どの組織においても必要最小限度の人員で仕事を進めているのが現実です(場合によっては必要数に届いていない場合も・・・)。

そのため、各自の権限を明確にし、個人ごとに細かく仕事を割り振るのが常となっています。

それは必要不可欠なやり方ではあるのですが、「隣の人は何する人ぞ」では、やはり不祥事が簡単に起こってしまう状況となります。

仕事が細分化された課員の場合はある程度仕方がない状況ですが、上司となる人の場合は、それぞれの部下が今何をしているかくらいは把握しておかねばなりません。

ただ、最近は、自分の業務を持ちながら部下の管理も行う「プレイングマネージャー」にならざるを得ませんので、働く人間の才覚や目配りだけでリスクに対処することには限界があります。

会社として措置を行うべき話となりますが、「バックアップ要員を確保」できるのが一番の理想です。

それが難しい場合は、「社内の情報共有を進める」、あるいは「各自の仕事の手順をマニュアル化し、それを誰もが閲覧できる形にする」方法等があります。

廃棄物処理法違反に組織として対処するためには、「一人の担当者に業務を丸投げ」するのは危険ということです。

その担当者が間違う可能性もありますし、ネクスコ職員のように不正をされてしまうと、組織内でそれをチェックする人がいない以上、リスクは一気にクライシスになってしまいます。

「直接の担当者以外の人間にも、他人が担当している業務フローを理解してもらう」ことがポイントかと思います。

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