法令遵守教育の達成基準とは

前回の記事 「法律違反と命令不服従のどちらを罰するべきか」では、「『法令遵守教育の徹底』というコメントを吐いた時点で、その組織のリスク対応は失敗に確定」と書きました。

では、それが十分に行われた状態とは、どのような状況なのでしょうか?

全従業員に毎週1回必ず行う?

頻度が多ければ多いほど、教育効果の浸透が望めそうですが、教育という機会を作ること自体が目標となっては本末転倒です。

また、一人の人間に対し、同じ内容の研修を何度も繰り返すわけにもいきませんので、単純に頻度を増やすこと自体が困難でもあります。

「では、年1回だけでも教育しておくか」となるかもしれませんが、プロの講師でもない限り、研修内容を毎年ブラッシュアップし続けるのはなかなか大変です。

現実的に問題点に向き合うだけでは、堂々巡りになりそうですので、ひとまず最初の問いに戻りますが、今度は問いの内容を少し具体的にしてみます。

「法令遵守教育はいつまで行うべきか?」

私が思うに、その命題を解決するためのヒントは、我々が日常生活で子どもに使うフレーズに現れているように思います。

「○○してはダメって言ったでしょう」
「何度言えばわかるの?」

誰しも一度は子どもに吐いたことのある言葉であり、自分自身も親から言われた経験がある言葉だと思います(笑)。

このフレーズ、子どもに原因不明の罪悪感や劣等感を持たせるためにはうってつけの言葉です。

叱られてから言われたことを思い出すのが普通で、行為の真っ最中に、親の言いつけ(禁止命令)が頭に浮かぶ子どもはなかなかいません。

そのため、親が一度言うだけでは子どもは理解してくれないため、親は何度も子どもを叱る(=脅す)ことになります。

我々自身は忘れていることですが、社会規範を知り、それに沿って生きられるようになるというのは、かように難しいものなのです。

廃棄物処理法のように、大部分の人の目には視覚情報として入らない法律の場合は、幼児期に学ぶ社会規範と同じように、我が事として理解が進みにくいのだと思います。

さて、このように「子どもへの教育」と置き換えて考えてみると、「いつまで教育を続けるべきか」という問題の答えは明らかとなります。

それは

「子どもが理解をするまで言い続ける」ですね。

ただし、大人は子どもと違い、アタマが柔軟ではありませんので、先述したように、同じことを言い続けると、教育効果はガクンと下がります。

しかし、大人には子ども以上の人生経験の蓄積がありますので、「他人事ではなく、自分にも起こり得る問題」と認識させれば、「もっと学びたい」という意識を目覚めさせることも可能です。

従業員教育の最終的な目標を、「『他人事ではなく、自分にも起こり得る問題』と認識させ、『もっと学びたい』という意識を目覚めさせる」こととすると、
実務的な解決策としては、
「事件や事故報道が起こるたびに」
「我が社で起こった場合はこうなる」
「あなたが当事者だとどう収拾する?」
「そのような危機が起こらないようにするためにはどうすれば良かったか?」
等を、参加者に考えさせるようにすると良いでしょう。

これなら、開催の頻度や時期に頭を悩ませることなく、研修内容を常に更新し続けることが可能になります。

事件や事故報道は、当ブログでも随時ご紹介しておりますので、引き続きご愛読いただければ業務のお役に立てると思います(笑)。

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