あなたが取締り担当者だったらどうする?

産経ニュースに興味深い報道がありました。
廃棄物搬入に対抗、宇陀市が市道封鎖 きょうから 奈良

今回は、この実例を元に、「あなたが行政の取締り担当者だったらどうやって対抗する?」というテーマで考えてみます。

 宇陀市は29日、同市榛原額井で、橿原市内の業者が業務上での市道の通行届け出を行わず、所有地に廃棄物を搬入するなどしているとして、30日から所有地への進入路となる市道を封鎖して通行を禁止すると発表した。

 市によると、この業者は所有地に廃材などを搬入した上、9月中旬に小型焼却炉を持ち込み、焼却処分を始めた。このため、近隣の自治会から市に苦情が寄せられているという。

 市は所有地が住宅地に近いこともあり、業者に廃棄物の一時保管や焼却を止めるよう伝えたが、業者は県に所有地での廃棄物の保管などを届け出ていることから、市の要請には応じていないという。

 このため、市は市道の保護などを理由に、市道封鎖による事実上の強制措置を行うとしている。

 市は近く県に対しても立ち入り調査の強化などを要望する方針。

現在進行中の事件ですし、具体的な経緯が明らかではないため、下記のように問題を想定してみました。
注:あくまでも、事例研究のための設定ですので、報道内容を材料として構築したフィクションです。

1.行為者は解体業者で、産業廃棄物処理業の許可を持っていない
2.解体後に出た廃棄物を、奈良県宇陀市内の土地(保管面積350平方メートル)で保管することにし、奈良県に保管場所の届出をした
3.保管場所に小型焼却炉を設置、焼却処理を開始

さて、では、あなたが行政職員だったら、このようなケースにどう対処しますか?

形式上は合法そうだから静観する?

それとも

地元市役所に対応を一任する?

私が担当者だったら、次のように対処します。

1.一番の問題は現場での焼却行為であるので、焼却行為が合法であるかをまず調査する。

2.そのためには、立入検査をして、焼却炉の構造を詳しく調査。
 1時間当たり200kgの焼却能力、または火格子(火床)面積2平方メートル以上の木くず焼却炉の場合は、設置許可が必要な施設なので、それがある時点で違法。
 その他、燃焼ガスの温度の連続測定装置がついているかなども調査。これらの装置がついていない焼却炉は、設置許可不要の小規模焼却炉であっても違法。

 ここで違法性が見つかれば、法律をてこにして、告発の構えも見せながら、早急に焼却炉の撤去をさせる。

3.2の調査で違法性がなかった場合は、別の角度から食い込むことができないかを検討。
 具体的には、「元請の立場で解体工事を施工しているのか」、「奈良県、あるいは奈良県隣接の府県の工事で発生した廃棄物なのかどうか」を調べます。
 これに当てはまらない場合は、他者の廃棄物を無許可で積替え保管という違法行為となるので、そこからじわじわと責めていきます(笑)。
※筆者注:読者の方からのご指摘により間違いに気づきましたので、上記の一文を削除しました。
下請の自ら運搬の規定と混同して対策を書いていましたが、解体工事の場合は、下請の自ら運搬としてみなされることはありませんので、この条件は最初から検討する必要がありません。
ご指摘ありがとうございました。

4.行為者が焼却炉を自主的に撤去しない場合は、発注者や元請業者にも圧力をかけ、行為者を兵糧攻めします。
 圧力といっても当然脅迫などではありません。礼儀正しく注意をお願いしたり、委託者としての責任をどうお考えですかと質問することを指します。

大まかな対応フローとしては上記のようなものになりますが、
一番肝心なのは、行政機関のスピードとコスト意識。

行政の一番の欠点は、スピード感とコスト意識の欠落です。

問題に対応しようがしまいが、担当の給料や人事考課にはほとんど影響しないからです。

もちろん、誠実に仕事の本分を全うし、迅速、かつ丁寧な対応を心がけている職員が多いのも事実です。

それでも、組織全体としては、ほぼすべての機関にスピード感の欠如という問題があります。

絵に描いた餅で終わらせるのではなく、必ずやり遂げるという信念が不可欠なのです。

こういった仕事は表立って評価されないかもしれませんが、行政にしかできない仕事でもあります。

住民の中でも、見ている人は見てくれているものなので、諦めず、腐らず、前向きに公務に取り組んでいただきたいと思います。

※下記バナーの応援クリック投票をよろしくお願いします。
にほんブログ村 環境ブログ 廃棄物・リサイクルへ

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ