謝罪コメントから見る日本のコンプライアンス態勢の不備

昨日は、顧問先処理企業の方と今年中にその会社で策定予定の「コンプライアンス・ブログラム」に関する打ち合わせをしておりました。

その時に、先日当ブログでも取り上げた 名古屋製酪の不法投棄事件が話題になりました。
名古屋製酪がヨーグルトを不法投棄

「会社の規模が大きくなればなるほど、このような事件が発生しやすくなるので、精神論ではなく、実態に即したコンプライアンス・プログラムを策定しましょう」
と、二人で決意を新たにしたところです。

精神論というのは実に厄介な代物でして、
日本の組織文化の底流には、「道徳論や精神論で人間の行動を律することが可能」という、
よく言えば「性善説」、率直に表現すると「思い込み」があります。

くしくも、同時期に、組織の構成員が逮捕されたことに関する謝罪コメントが2件発表されました。

名古屋製酪 と
経済産業省 です。

両方の謝罪コメントを読むと、冒頭で述べた「精神論」のくびきを脱していないことがわかります。

まずは、名古屋製酪のコメントから

 本来、製品の廃棄処理は、社内管理マニュアルの返品処理手順に基づくと取り決めをしておりましたが、管理が行き届かず不法投棄が行われておりました。
 弊社におきましては、本件を真摯に受け止め、今後は二度と同じ問題を起こすことが無いよう管理体制の見直しと強化を行い、皆様に引き続き、安心、安全の商品供給ができますよう、社員一同誠心誠意努めて参る所存でございます。

「ルール」を決めさえすれば、会社が何も言わなくても社員はそれを順守するだろう
と思っていたが、「管理」が行き届かなかったために、不法投棄を起こしてしまってゴメンナサイ。

というものですね。

今後の対策としては、「管理体制の見直しと強化」という、非常に抽象的な表現でお茶を濁して終わりになっています。

具体的にどのような欠陥があり、どう改善していくかを考えない限り、抜本的な対策にはなりません。

それに、社員の行動を24時間監視し続ける、つまり管理し続けることは不可能ですので、
管理を強化するだけでは、また同じ犯罪がいつか起こることでしょう。

次は、枝野経済産業大臣の談話

当省としては、株式等の取引に対する徹底的な意識改革を進めるため、昨年末に内部規則を抜本的に強化し、
1.当面の間、株式等の取引の自粛を求めることに加えて、こうした規制を実効的なものとするため、
2.自ら及びその配偶者等の証券口座を登録すること、
3.証券会社への照会、証券取引等監視委員会への通報等に必要な協力をすること
を義務付けており、既に全省を挙げて取り組んでいるところである。
今般の事態を受け、さらに、全職員から内部規則を遵守する旨の誓約書を提出させて、二度とこのような事態を生じさせないよう、取組を徹底してまいりたい。

はっきりいって、名古屋製酪以上に無責任な談話です。

今後同種の犯罪を防ぐために、「全職員から内部規則を遵守する旨の誓約書を提出させ」るだけで、足りると本気で思っているようです。

書かれている対策のすべてが、職員からの自発的な行動に依存するもので、
経済産業省として積極的に研修や監視を行うつもりがないことを露呈しています。

「個人の犯罪であり、経済産業省に一切の責任はない」と言いたいのかもしれません。

たしかに、犯罪自体は個人的なものですが、職務上知り得た秘密を元にインサイダー取引をした以上、
経済産業省には、そのような取引をしないように職員を監督・管理する責任があります。

枝野大臣の談話にあるような生ぬるい対処では、近いうちに同種の犯罪がまた起こるものと思います。

企業のトップがこんな談話をしたら、「無責任なことを言うな!会社の責任をどう思っているんだ!」と批判が殺到するのは間違いありませんが、枝野大臣の談話に関してマスメディアから批判は一切上がっていないようです。

権力のチェック機能がマスメディアの存在意義の一つですが、それが満足に働いていないという現実を見ると、
今さらながらですが、日本のお寒い現状に寒気がしてきました。。。

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