震災廃棄物利権に関する都市伝説
静岡県島田市の桜井市長が震災廃棄物の受入を表明して以降、その他の自治体も続々と震災廃棄物の受入を表明し始めました。
桜井市長の英断が呼び水となり、安全性に配慮した上で、被災地の復興に協力しようという動きが強まるのは望ましいことです。
ずいぶん前から話題になっていましたが、
「島田市の桜井市長は元産廃屋だから利権に違いない」という風評がネットではまことしやかにささやかれています。
桜井市長が、過去に桜井資源株式会社という廃棄物処理企業の社長であったのは事実ですが、
「だから廃棄物利権を誘導している」というのは、風評以外の何物でもありません。
数か月前までは、桜井資源株式会社のHPが公開されていたように記憶しておりますが、
現在は風評被害のためか公開されていませんので、他のサイトに掲載された情報から判断すると、
桜井資源株式会社は、廃棄物処理企業というよりも、鉄くずリサイクルを中心とした“専ら業者”という方が実態に近いようです。
鉄くずのリサイクルを事業の中心とする専ら業者の場合、
管理型最終処分場を有する大手の産業廃棄物処理業者とは違い、
震災廃棄物のほとんどは「商品」になりません。
金属くずの割合が非常に少ないからですね。
震災廃棄物の受入を市長が進めたところで、専ら業者に発生する利権はありません。
専ら業者と廃棄物処理業者では、扱う商品がまったく違うのです。
桜井資源株式会社が、大規模な管理型最終処分場を有し、島田市で処理した震災廃棄物の燃え殻などを一手に引き受ける
というような場合は「利権」です。
しかし、実態はそうではないのは上述した通りです。
個人的には、「産業廃棄物処理企業の元経営者だから、利権誘導に違いない」というのは、正当な抗議ではなく、単なる誹謗中傷だと思います。
もっとも、私は桜井市長の人柄や実績をまったく知りませんので、上記は震災廃棄物を島田市で受入れることのみに関する意見です。
その他、田中康夫議員の国会質問が各所で取り上げられていますが、
「枝野大臣の父親は関東の産業廃棄物処理業界の重鎮」など、こちらも事実無根のデマがまことしやかに説かれています。(^_^;)
「阪神淡路の時が2000万トン。東日本大震災は2300万トン。即ち岩手・宮城・福島3県に及ぶ後者は、被災面積当たりの瓦礫(がれき)分量は相対的に少ないのです。」ともあります。
しかし、忘れてはいけないのは、阪神淡路の時は大阪湾広域臨海環境整備センターの存在があり、また川崎市をはじめとする他地方の廃棄物処理協力があったからこそ、早期の復興が可能となったことです。
被災面積当たりのがれきの量を云々することにはあまり意味がありません。
面積が広いからと言って、廃棄物の広大な保管場所が方々にあるわけではないからです。
イメージや先入観のみで問題の本質をわかった気になるのは非常に危険ですね。
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2012年3月19日 | コメント/トラックバック(2) | トラックバックURL |
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コメント
私も自身のブログに書いたのですが、あくまでも東北3県でみれば、なんですよね。そこには青森や茨城、千葉のがれきのことや内陸部の倒壊については含まれていませんし、ヘドロ、道路・堤防のがれき、自動車、船舶なども含まれていないんですよね。(土砂・ヘドロ等の『津波堆積物』は最大1600万トンと推定)
東北ならではの地形(平地が少なく山がち)や、今は広く見えるけれども、かつては加工場や農地だったという視点も抜けています。
港湾の埋め立てでコストが抑えられたことも知られてないようですし、既設の処理能力もかなり違うということも話されていない。
津波廃棄物ならではの問題(塩分の洗浄、重金属の付着等)による作業の増加もあるのに、そうしたことは話されず、利権ありき、で話があることが腑に落ちませんでした。
まあ、そうした薄黒い部分は、ヒトが好んで飛びつく話題ということなのでしょうね。
貴重なお話、ありがとうございました。
参考にさせていただきます!
ドリハイジャック様 コメントいただきありがとうございました。
津波廃棄物だからこその問題 まさにご指摘のとおりだと思います。
絆という言葉が空しく感じられますね・・・
元々絆が無かったところに、無理やり絆をあてがうことが間違いだったのかもしれませんね。