廃棄物の全量撤去は現実的か

信濃毎日新聞 長野の大量産廃放置、市が撤去の代執行検討へ

 長野市穂保に大量の産業廃棄物が放置されている問題で、市は22日、放置した業者らに代わって市が産廃を撤去する「行政代執行」を来年度以降に検討する方針を明らかにした。産廃を放置した産廃処理業「アクト全産」は破産手続きが完了しているため、市は排出元の事業者が判明している産廃の約2割を来年3月までに撤去し、事業者側に費用請求する方針。ただ、残り約8割の対応は見通しがつかず、地元からは再三、全量撤去を求める声が出ていた。

 同日、地元の長沼地区で開いた「元気なまちづくり市民会議」で市が説明。約2割の産廃を撤去した後、生活環境への支障や危険があるかなど代執行が必要かどうかを調査する他、アクト全産に土地を貸していた土地所有者や県とも対応を協議するという。

 市によると、放置された産廃は全体で約2万3560立方メートル。市はこれまで同社に処理を委託していた排出事業者の特定に取り組み、不適正な委託が確認できた47社に負担を求める形で、約2割を撤去するめどを付けた。

 全量撤去にかかる費用について、市は「まだ計算していない」(廃棄物対策課)としている。代執行した場合、アクト全産などから費用回収をするが、公費負担も避けられない状況になりそうだ。

新聞では簡単に「全量撤去」と書かれていますが、それがどれくらいの量かが重要ですので、長野県の記者発表内容を調べました。
長野市のH23年6月2日付の措置命令 によると、
放置されたのは約22,000立方メートルの建設廃棄物とのことです。

報道や長野市の発表内容を見る限りでは、
2万立方メートル超というのは大量の部類に入りますが、果たしてそれを行政代執行で全量撤去するのは現実的に可能なのでしょうか。

全量撤去が現場の近隣住民にとって理想的であるのは事実ですが、
捨てられたものが建設廃棄物のように、腐敗のおそれがない廃棄物の場合は、行政代執行は生活環境保全上支障がある範囲に限定されるのが一般的です。

実際には、堆積物が崩落しないように、堆積物の傾斜を緩やかにする工事や、擁壁の補強や増強などが行われるのが常です。

豊島や青森・岩手県境投棄事件のように、有害物質が含まれていたり、地下水の汚染が行われているような場合には、不法投棄物の全量撤去が図られることもありますが、今回のようなケースでは、上述したような一部撤去の方が妥当であろうと思います。

廃棄物の積み上げられた高さや、現場の面積などがわかりませんので、どれくらいの量を撤去すべきか判断できませんが、
狭い土地であるほど、そして積み上げられている高さによっては、かなりの撤去費用が必要になります。

一般的な相場としては、2万立方メートル超の建設廃棄物を全量撤去・処理する場合、
最低でも2億円程度の経費は必要と思われますので、よほど潤沢な補正予算を計上できる自治体でない限り、簡単に代執行できるレベルではありません。

長野市は「排出事業者が判明した2割分の廃棄物を撤去」と、非常に現実的な目標を示されていますので、行政サイドとしては全量撤去を志向していないと考えられます。

ただし、その2割分についても、全額を排出事業者から回収するのはかなり困難だろうと思います。

施工費を含めて1千万円程度の撤去費用が必要と思いますが、建設業者からそれらの金額を全額回収するのは非常に難しそうです。

しかしながら、「2割は撤去する」と公的に表明された以上、長野市におかれては必ず撤去されることと思います。

あとは1円でも多く、委託者である排出事業者から回収していくことが目標となりそうです。

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