行政の審査の限界

1月29日付毎日新聞
産廃最終処分場:旭などに計画、県が不許可に エコテック、暴力団と融資で接点  /千葉

 千葉市の産廃処理業者「エコテック」が98年から県に最終処分場の設置許可を求めていた問題で、県は28日、同社が暴力団の関係企業から間接的に2億5000万円の融資を受けていたとして、廃棄物処理法に基づき不許可処分にしたと発表した。融資は設置申請したころから始まっていたが、県は審査で見抜けず、問題は長期化した。県の審査のずさんさを指摘する声も上がっている。暴力団との関係を理由に産廃処分場の設置申請が不許可となるのは県内初。
 ◇「ずさんな審査」批判も

 県廃棄物指導課によると、同社は98年、旧海上町(現在は旭市)などにまたがる土地に処分場建設を計画し、設置許可を県に申請。県は01年に設置を許可したが、環境影響を懸念する地元住民が同年、県に対し、許可取り消しを求め千葉地裁に提訴。地裁は住民側の訴えを認め、東京高裁もこれを支持。最高裁が上告を受理せず、10年、許可取り消しが確定した。

 ところが、県はその後、「手続き的な瑕疵(かし)による取り消しで、許可申請は残った状態」などとして再審査する準備を進めていた。

 一方、同社は建設予定地の抵当権を巡る民事訴訟を債権者から起こされており、県はそうした裁判資料の提出を同社に求めたところ、資料の中から暴力団企業とのつながりが新たに判明。同社は暴力団の関係企業から受けた融資をダミー会社を介して受け取っていたという。融資は計画が具体化した98年から始まり、総額2億5000万円に達した。廃棄物処理法は「暴力団員等」が「事業活動を支配する者」だった場合、その事業を不許可とする規定がある。

 審査で見抜けなかったことについて、同課は「隠れていて把握できないものもある。暴力団排除に向け、今後はさらに丁寧に調べたい」と説明した。

 反対住民側の弁護を担当した及川智志弁護士は「登記をしっかり調べれば不審な点は見抜けたはず。形式的な審査しかしていなかったと批判されても仕方がない」と指摘した。及川弁護士によると、処分決定を聞いた反対住民らは「長年の苦労が報われた」と話しているという。

近隣住民との利害調整や、環境保全対策など、実際には色々な問題があったものと思いますが、
千葉県が暴力団関係企業の迂回融資を見抜けなかったことに過失があったかどうかという点に絞ると、
私は「千葉県に過失はなかった」と考えています。

弁護士の方は「登記を調べれば不審点を見抜けたはず」と言われていますが、
記事に書かれているように、ダミー会社を経由して融資を受け、登記簿の抵当権者にそのダミー会社しか記載されていないのであれば、行政としてそれ以上の調査や審査は無理です。

行政は捜査機関ではありませんので、暴力団に関する情報を持っているわけではないからです。

通常、そのような暴力団に関する情報を調べる場合には、県警に対して照会という形で行われます。

ただし、一般的には、登記簿に記載された抵当権者の素性を、一つ一つ県警に照会することはありません。

許可申請件数自体が膨大な数ですし、照会を受けた県警が回答するために必要なリソースも無限ではありません。

サラ金のように、端末に情報を入力すれば、オンラインで一瞬で回答が返されるわけではないからです。

聞くべき内容を一つずつ明示し、それを行政内で決裁し、文書で県警本部に照会
そして、それを受けた県警本部ではデータベースを参照し、該当の有無を回答するために、県警内部で決裁、そして最後に書面で回答
という、普通は1月以上かかる作業になります。

また、もう一つの論点として、
そもそも最終処分場設置場所の登記簿は、許可申請書に添付しなければならない書類ではありません。

提出が義務付けられていない書類に関する調査を行政に求めるというのも、最初から無理な注文なのです。

ただし、登記簿は法定された添付書類ではないにしても、ほとんどの自治体で提出を求めているのも事実ですが、住民票などの添付が義務付けられる役員や株主とは違い、抵当権者の素性まで調査する必要性や意義はほとんどありません。

今回は、千葉県が独自に(?)入手した土地に関して民事紛争があるという情報に基づき、任意で裁判関係の書類を事業者に提出させたお陰で、暴力団関係企業の迂回融資が発覚したわけですから、むしろ千葉県のアクションを評価するべきではないでしょうか?

上述したように、千葉県と住民との間でコミュニケーションがうまくいっていなかった経緯はあるようですが、それはそれ

行政にできないことまでを、行政の過失に結び付けるような批判はアンフェアだと思います。

ダミー会社を登記簿に記載する工作をされてしまうと、県警でさえ、ダミー会社に関する情報が少ないうちは暴力団の関与を見抜けないとも思います。

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