環境省通知は錦の御旗か?

4月12日付中日新聞 「無許可業者減れば」 家電回収業者逮捕で環境省

 空き地に野積みにされた家電は再利用可能な中古品か廃棄物か-。線引きの難しさから取り締まりが遅れていた無料回収業者について、県警は十一日、廃棄物処理法違反(無許可収集)の疑いで、岐阜市西中島の無料回収業者「ファイブエス」の経営者(27)と元従業員の容疑者(27)の二人を逮捕した。無料回収業者をこの容疑で逮捕したのは全国初で、環境省担当者は「これをきっかけに、全国で無許可の業者が減れば」と期待している。

別の新聞記事では、容疑者が逮捕される写真が掲載されているものがありました。

無許可営業が犯罪であるのは事実ですが、今回のような事件で逮捕風景の撮影までが必要かどうかはかなり疑問です。

見せしめの意味合いが強そうです。

 許可なしでの廃棄物収集は違法だが、これまでは業者側が「再利用するので廃棄物ではない」と主張すると規制は難しかった。県などによると、県内の無料回収所は昨年末時点で九十三カ所あったという。

 ただ集められた家電の多くは、スクラップにして海外に輸出されているとみられ、保管中の土壌汚染も懸念されている。環境省は昨春、テレビや冷蔵庫など家電リサイクル法の対象四品目で「野外で保管していれば廃棄物」などと定めた通知を出して基準を明確化。これが今回の摘発につながった。

記事の表現を見ると、環境省の通知が無許可業者の逮捕の主因であるかのように書かれています。

通知が逮捕のきっかけになったのは確かでしょうが、日本では、役所が勝手に出した通知と言う紙切れに基づいて人を逮捕することは不可能です。

通知はあくまでも解釈の一基準にしかすぎないわけですので、容疑者を逮捕拘束するためには、法律に照らして違法であるという確実な証拠が必要です。

警察が環境省の通知を錦の御旗として逮捕に踏み切ったわけではないと思いますが、このあたりは誤解を招かないように、少し表現を工夫して欲しかったです。

 一方で、岐阜市内で家電などを無料回収している三十代の男性は「通知は実態と合っていない」と指摘する。

 洗濯機の場合「製造から十年以内」「ふたが欠けていない」などを満たさないと廃棄物扱いになるが、「基準に合ってなくても十分売れる」。野積みされ、使えなくなった古いブラウン管テレビでも「ネットオークションに出すと、インテリアとして買っていく人もいる」という。県警によると、逮捕された容疑者も「廃棄物とは思っていなかった」と話しているという。

そうかと思うと、無許可と思われる廃品回収業者にも取材をするなど、ある程度幅広く取材をしたようです。

ただし、新聞に掲載するほどの意味があるコメントとは思えませんが。

「ブラウン管TVをネットオークションに出品すると、インテリアとして一人が買ったから廃棄物ではない」というのは、廃品回収業者の単なる方便で、社会的にはそのような買い物をする人はほとんどいないと思われます。

「売れるから廃棄物ではない」というのは本当に古典的な言い訳で、
・元々が廃棄物かどうか
・物品を購入して保管しているかどうか
の2点が重要な判断ポイントとなります。

「無料で廃棄物を回収(受け取る)した場合はどうか」については、
その物が廃棄物である以上、購入以外は廃棄物扱いするというのが、行政の統一的な解釈基準です。

では、購入はするけれども、運賃の方が高くなるという場合は?

この部分については、後日ブログで触れる予定です。

 「土壌汚染など問題点は理解するが、無料回収の需要は高く感謝されることも多い」とこの男性。環境省の担当者は「規制を強めるだけでなく、安く手軽にリサイクルできるような法整備も進めていきたい」と話している。

需要があって感謝されるからといって土壌汚染をしても良いわけでないのは言うまでもありません。

環境省担当者のコメントは、本当にそう思っているかかなり疑問に思える内容です。

もし本当に環境省がそう思っているのであれば、無料廃品回収業者を行政の監督下で、安全確実に無料回収させるのが一番だと思います。

現段階では、そこまで踏み込んだ検討はまったくなされていないようですが。

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