許可証の偽造は有印公文書偽造罪になります

目新しい犯罪に見えるかもしれませんが、同じ手口で許可証の偽造をし、委託先まで巻き込む事件が数年前から現れています。

運搬許可証偽造の疑い、産廃業者を書類送検

 産業廃棄物を運搬するための許可証を偽造し、解体工事で出たコンクリートなどを運んだとして、千葉県の産廃業者が警視庁に書類送検されました。

 有印公文書偽造などの疑いで書類送検されたのは、茂原市の産業廃棄物運搬会社「山崎興業」と60歳の社長ら2人です。警視庁によりますと、社長らはおととし10月、廃棄物の運搬に必要な許可証を偽造し、住宅の解体工事で出たコンクリート片などを無許可で運搬した疑いが持たれています。また、運搬を委託した業者2社も書類送検されています。

公文書を偽造した者が逮捕されるのは当然ですが、
実質的な無許可業者に委託をした排出事業者も、家宅捜索や書類送検の対象になることに注意が必要です。

「無許可営業」は廃棄物処理法第25条違反で「5年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金」という一番重い罰則の対象になりますが、「無許可業者への委託」も第25条の罰則の対象になります。

「業者が勝手に許可証を偽造したので、それを信じた委託者には過失はない」と思いたいところですが、
第25条には、無過失で許可証を信頼した場合は刑罰を適用しないという除外規定がありませんので、悪意や過失の有無に関係なく、委託先業者が許可を持っているかどうかだけがポイントになります。

もっとも、委託者が業者に許可が無いことを知らずに委託するのがほとんどだと思いますが、その知らなかったことの過失の度合いが小さければ、「懲役5年」などという重い刑罰がいきなり科されることは考えにくいですが。

しかしながら、無許可業者に委託をしたという結果自体は深刻なもので、委託者が大きな会社の場合は、本社への家宅捜索が敢行された実例もあります(2010年12月)。

 山崎興業は2010年に運搬業者としての許可が取り消され、それ以降、許可証の年月日をパソコンで打ち込むなどして偽造していたということです。

以前はカラーコピー機で許可証をカラーコピーし、許可年月日を偽造するという手口が中心でしたが、
今回は、PCの画像処理ソフトを使って偽造をしたようです。

実際はそれほど高度な技術ではなく、おおよそのやり方は想像がつきますが、ここでそれを解説して真似をする人が出てもいけませんので自粛をします。

では、無許可業者をどうやって見抜けば良いのか?

中間処理業者の場合なら、現地確認によって実際に操業しているかどうかを確認できますし、行政の監視の目も厳しいため、堂々と無許可営業をしているケースはほとんどありません。

しかし、今回のように、委託先から中間処理業者間を直送する積替え保管なしの収集運搬業者に対しては、運搬車両を追走しない限り、処理状況確認を行うことができません。

また、偽造許可証の内容を無過失で信頼したとしても、それだけでは刑事罰の適用を免れることはできません。

「処理状況確認は困難」、「許可証があったとしても偽造の可能性がある」となれば、
委託者ができることは、「行政の公開情報で業者の許可の有無を調べる」しかありません。

新規取引開始の際には、管轄行政に電話をして許可の有無を直接確認するのも良いですし、
それが難しいのであれば、自治体のHPを閲覧して、「行政処分の対象になっていないか」「業者名簿に掲載されているか」などは最低限確認しておきたいところです。

後は、偽造技術が発展したと言えど、偽造された許可証にはおかしな点があるものです。

それがどんな点かを書くと、偽造の際のチェックポイントにされかねませんので、やはり自粛しておきますが、数多くの許可証という公文書を見ると、公文書に共通した一定の書き方の傾向に気が付くはずです。

偽造犯は公務員ではないため、お役所文書特有のルールに無頓着であることがほとんどですので、上記のような許可証を数多く見るという経験を積んだ人は、偽造された許可証からおかしな兆候に気づくことも可能と思います。

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