遺品整理業流行の拡大

数年前まではほとんど注目されていませんでしたが、最近は「遺品整理」と題したセミナーをすると、かなりの数の聴講者が集まるようです。

その聴講者の大部分は一般廃棄物処理業者であることから、既存事業の補完、あるいは新規事業の一環として関心を示している事業者が多いということになります。

多くの一般廃棄物処理業者が関心を寄せる「遺品整理」ですが、自治体の側もそれに柔軟に対応する姿勢を見せ始めたようです。

2013年9月19日 物流ウィークリー 遺品整理限定で一廃許可 北海道帯広市が全国初

 北海道帯広市が遺品整理業務限定で「一般廃棄物収集運搬許可」を出していたことを8月6日、遺品整理士認定協会(木村榮治理事長)が公表した。遺品整理限定での許可は全国で初めて。今後は他の自治体にも広がるものと見られ、「遺品整理」の事業化を目指すトラック運送事業者にとって朗報となりそうだ。

 許可は6月20日付で、山本金属(山本武尚社長、同市)が取得。取り扱う一般廃棄物の種類は「引っ越しごみ及び遺品整理等に伴う一事多量排出ごみ」として、同市全域を対象に許可された。同市では「遺品整理限定」による許可は全国初のため「他の自治体への影響」を配慮し、情報公開せず、申請者や同協会にも「一般に口外しない」よう求めていたという。

 高齢化や老人の孤立化増加などの背景から「遺品整理業」への需要は高まり、引越業者を中心に参入を計画する運送事業者は多い。ただ、産業廃棄物の許可業者や古物商なども入り混じり、現場は混乱。環境省は各自治体に「家庭の廃棄物は一般廃棄物。収集・運搬は廃棄物処理法に基づく市町村の許可が必要」と通達していた。

 一廃の許可については産廃以上に「新規は取りにくい」とされるが、「限定」でハードルも低くなる。同市は「必要な知識を持って順法精神で行うことを理解する事業者には、今後も許可していく」方針という。

 山本金属は産廃業者だが、同協会によると現在、釧路市、函館市、弘前市(青森県)、天童市(山形県)などでトラック運送事業者4社が申請に動き出している。

物流の業界誌であるため、大きなビジネスチャンスがあるかのように書いている点を割り引いて読む必要があります。

特に赤字の部分、「(遺品整理)限定でハードルは低くなる」という部分は、現実とかい離した希望的観測でしかないと思います。

許可対象を狭く限定するからといって、市町村が一般廃棄物収集運搬業許可を新規事業者に乱発するとはとても考えられません。

それに、個人的見解としては、
遺品整理なる事業は、人間の最後の尊厳に関わる崇高な仕事であるため、「儲かるから」という理由だけで、運送屋や便利屋(←あえて「○○屋」と呼称)にホイホイと参入してもらいたくない事業です。

人生の最後を見届ける勇気と、故人に対する愛情が不可欠となる仕事です。

昨日まで荷物しか運んでいなかった運送屋に、いきなり務まる仕事ではありません。

参入するならするで、手っ取り早く儲かる補完事業としてではなく、しっかりと従業員教育をした上で、「故人の人生の最後の後始末」という厳しい現実と向き合う覚悟を持っていただきたいと思います。

事業分野が生まれたばかりであるため、このように混乱をするのも仕方がないことかもしれませんが、一日も早く遺品整理業界で淘汰が進み、不良業者が駆逐されると良いのですが。

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コメント

  1. 匿名の一廃業者 より:

    いつも興味深く拝見させていただいております。弊社は、お仏様ご自宅の「片付け」を、一廃収集運搬業許可を取得の上で、永年にわたり取り扱っております。現場では、一廃として行政施設へ搬入できる荷物と、行政に搬入を拒まれる荷物が混在しております。ご遺族からは、「遺品」と併せて、物置の「灯油・除草剤・中身不明の試薬ビン」を、洗面所の「整髪料・トイレ洗剤等の薬液類」を、台所の「中身の入ったカッセトボンベ・消火器」を、庭先の「廃タイヤ、ブロック等」少量処理困難物の「処分」を求められることは日常茶飯事です。実務では廃掃法違反にならぬよう「許可の範囲・契約の締結」に慎重な「ノウハウ」が求められております。処分先が確保できず・処理費用が折り合わず「置いてくる荷物」もございます。ロットの集まらない多品種・多性状の荷物を「法令を遵守し、適正な処理ルート」に引き継ぐのは案外コストがかかり、苦労が多いのが実情です。

  2. 尾上雅典 より:

    コメントいただき、ありがとうございます。

    お書きいただいたように、真剣に取り組む企業にとっては、廃棄物処理法との整合性に悩まされる場面が常に出てくる事業ですね。

    そのように取り組まれた結果は、そこらの異業種からの参入組では太刀打ちできない貴重な管理システムだと思います。

    今後ともよろしくお願いします。


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