終わりなき安全管理行動

千葉県野田市で発生した廃油精製施設の爆発事故につきましては、既に各所で大きく取り上げられていますが、ようやく事故の直接的な原因が明らかになりそうですので、当ブログでも取り上げたいと思います。

ただし、私自身は廃油の処理技術や安全対策に精通しているわけではありませんので、安全管理原則から見える処理企業の本質について考察します。

事故発生後の被害状況など
11月18日 13時20分 NHKニュース 千葉の廃油精製施設爆発 消防が被害調査

爆発現場から数十メートル離れた全く別の企業の工場を全壊させるなど、死傷者が出たことのみならず、多方面に甚大な損害を与えてしまいました。

操業に伴う事故の中でも、考えられる限りで最悪のケースと言えるでしょう。

そして、他の報道メディアでも、事故発生の原因が「揮発性の高い廃油を誤って蒸留施設で処理した可能性が高い」という報道が出始めました。
2013/11/18 13:20 日本経済新聞 異常調べず廃油回収か 千葉の工場火災

 千葉県野田市の廃油精製工場「エバークリーン千葉リサイクルセンター」で2人が死亡した爆発火災で、爆発当日の15日に従業員が取引先から廃油を回収した際、ガソリンのような臭いに気付きながら、社内のマニュアルに従わず、詳しく調べないまま工場に持ち帰っていた可能性が高いことが18日、エバークリーンへの取材で分かった。

 同社は普段、ガソリンスタンドや自動車整備工場などからエンジンオイルなどの廃油を回収しているが、混入すると危険なガソリンなどの揮発性の高い油を誤って回収したとみて、確認作業を進めている。

 同社によると、取引先から14日、7700リットルの廃油の回収依頼があり、15日に従業員2人が回収に向かった。この際、2人はガソリンのような臭いに気付いたが、社内マニュアルが定めたサンプル調査をせず、そのまま持ち帰ったとみられる。

 マニュアルでは、臭いや色などに異常を感じた場合は回収を拒否して、サンプルだけを持ち帰ることになっていた。

安全管理マニュアルとしては、一応は明確な基準を設定済みでそれを運用していたことになっていたようです。

もっとも、廃油の回収という現場最前線でそのマニュアルの趣旨が守られなければ、マニュアルは単なる紙切れと化します。

また、回収物の危険性のチェックを、ドライバーの判断力のみに依存し、回収されてきた廃油については、ノーチェックで処理を始めるという危なっかしい操業をしているとは考えにくいのですが、新聞報道を読む限り、会社側の主張としては「ドライバーの単なる判断ミス、あるいは不作為」にすぎないと、問題をいたずらに矮小化している印象を受けます。

企業として安全管理面に過失があったかどうかを調べるために、エバークリーン社の本社と事故が起こった工場へ家宅捜索が入るようです。
2013/11/19 23:31 日本経済新聞 爆発火災で家宅捜索 千葉の廃油工場

 千葉県野田市の廃油精製工場「エバークリーン千葉リサイクルセンター」で作業員2人が死亡、18人が重軽傷を負った爆発火災で、県警は19日、安全管理面などに過失があったとみて、同工場を家宅捜索した。

 会社側は、爆発当日に取引業者から回収した普段の納入量の20倍を超える廃油に高揮発性の油が混入し、爆発につながった可能性もあると説明している。

 県警は今後、東京都内のエバークリーン本社も捜索する方針。取引業者からも事情を聴き、工場内に残っていた廃油を鑑定して爆発原因の特定を急ぐ。

廃油の排出事業者に委託基準違反があったかどうかも問題になりそうですが、
爆発事故の前に、近隣の事業場でもガソリンのような異臭が漂っていたそうですので、廃油精製を事業として行う企業が回収物の異常に気付かなかったとは考えにくい状況です。

さて、ここからは、今回の事件で廃棄物処理法面で気になった点をまとめます。

この事故は処理困難通知の対象か?

処理困難通知を出すべきケースは、下記の8つの場合のみです。

そのため、単に事故が発生しただけならば、産業廃棄物の保管数量が上限に達しない限り、処理困難通知を出す必要はありません。

ただし、NHKのニュース動画を見ると、工場建屋の屋根や外壁が爆発で吹き飛ばされた状態ですので、実際には3の「施設の休廃止届」と出さざるを得ない状況と考えられます。

結局のところ、遅いか早いかだけの違いで、マニフェストD票が返送されてきていない排出事業者には、処理困難通知を出さないといけなくなりそうです。

排出事業者の責任は?

揮発性の高い廃油(特別管理産業廃棄物)を普通の廃油(産業廃棄物)と偽り、処理委託をしていたのであれば、排出事業者は委託基準違反をしていたことになります。

ただ、今回は通常の20倍に及ぶ大量の廃油を一度に回収したとのことですので、排出事業者がこれだけ大量の廃油を「普通の廃油」と偽って処理委託していたとは考えにくいところです。

廃油を引き受ける業者側としても、不審や警戒感を抱いて当然の回収量ですので、廃油を処理施設に投入する前に、最低でも臭気の確認くらいはやるのが当然と思われます。

この点については、今後の捜査状況の進展で明らかにされることと思います。

優良認定業者は全部信用できるの?

これは非常に奥深い問題ですが、私にとっては不思議なことに、処理業界及び排出事業者の双方が「優良認定業者は信用できる!」と素直に(?)信じている企業がほとんどです(行政にもその傾向あり)。

私も、「優良認定業者は、情報公開をしている情報だけは信用できる!」という条件付きでは賛成ですが、盲目的に“優良認定”という4文字を崇め奉るのは具合が悪いと思っています。

優良認定を受けているからと言って、未来永劫絶対に事故を起こさないという保証はありません。当たり前の話ですが。

その業者が安全管理マニュアルに忠実に操業しているかどうかは、排出事業者自身が現地確認をしない限り、絶対にわかりません。
インターネットで検索し、HPを閲覧したところで、「わが社は安全管理マニュアルを整備し、常時それに基づいて操業しています。( ・`ー・´) + キリッ」という情報が見つかるだけです。

言わずもがなかもしれませんが、爆発事故を引き起こした廃棄物処理企業も優良認定を受けていました。

「表向きの看板や情報公開の内容だけでは、取引先としての本質的なリスクがわからない」というのは、悪夢と言えます。

しかし、それを前提として今回の事件を観察していると、新しいリスク対策が見えてきました。

そこで、次回、処理業者が一番見られたくない弱点を抉り出すための、質問方法などを考察します。

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