「昆虫ソース」の開発成功に見る“邪魔者”活用の視点

和歌山県湯浅町で、バッタやイナゴを原料とした特製醤油の開発に成功したというニュースがありました。

虫嫌いの人には耐えられない話かもしれませんが、昆虫食は今後世界中の食糧問題を解決する可能性のあるテーマです。

2015年9月1日 産経ウェスト
道場六三郎も絶賛?「昆虫ソース」 大豆の代わりにイナゴやバッタで醸造、〝独特〟の風味で市場開拓狙う

 イナゴやバッタを原料にした「昆虫ソース」の開発が、しょう油発祥の地、和歌山県湯浅町の職人のアドバイスのもとで進められている。しょう油の伝統的製法にこだわりながらも、大豆の代わりに「昆虫」を使ったところがミソ。話題性も狙って取り組んだが、いざ始めてみるとイナゴは意外に見つからず、昆虫の殻が硬いため麹(こうじ)菌がうまく入らないなど作業は難航。試行錯誤の末、ようやく10月に商品化できるめどが立った。昆虫は発酵させても不快な臭いがなく、「清潔な生き物の証し」と担当者。ソースの味は“和の鉄人”として知られる料理人の道場六三郎さんも絶賛しており、和歌山の新たな特産品へ期待がかかる。

 開発を手がけるのは、同県紀の川市に住み、地域活性化支援団体「いなか伝承社」を運営する田中寛人さん(33)。きっかけは、平成25年に「和食」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことだった。これを機に、しょう油も「ソイソース」として世界で知られるようになったが、「なぜ、発祥の和歌山にスポットライトが当たらないのか」と疑問に思ったという。

 「昆虫ソース」は伝統的製法による手作りにこだわった。

 実質は「昆虫しょう油」だが、名前は新しい調味料として「ソース」にしたという。

 今回使った昆虫は、イナゴやトノサマバッタなど5種類で約1キロ(2千匹分)。「大豆は高脂質。一方の昆虫は低脂質だが、同じタンパク質だから大丈夫だろう」と考えていたが、たちまち問題が発生した。昆虫の殻が硬いため、麹菌が定着しなかったのだ。

 今回のソース作りで最も苦労したのは昆虫探しだった。田中さんは2年間、田畑に出かけて必死にイナゴやバッタを探した。和歌山は田畑が多く、昆虫に困ることはないと思ったが、「全然いないんですよ。山の中にも、草むらにも」。やっと見つけても、数匹程度だったという。

 結局、「イナゴのつくだ煮」や「ハチの子」など「昆虫食」に詳しい人を通して市販の昆虫を購入した。1キロ約4千円で、約60キロ分を約20万円で手に入れた。「昆虫になぜ20万円もかかるのか」。そんな疑問もあったが、知人に聞くと、今では貴重な生き物だということが分かった。

 イナゴなどは、少しでも環境が悪化するとすぐにいなくなってしまい、農薬や除草剤を一度使うと、戻ってくるのに数十年はかかる。最近は田畑のあぜ道もコンクリート舗装されているため、繁殖に適した環境も減っているという。

 逆に言うと、「昆虫は清潔な環境にしか住んでいない」(田中さん)ということ。新古さんは「魚を原料にすると発酵による臭いが強烈だが、昆虫は発酵させても不快な臭いは全くない。昆虫ソースを通じて、自然や環境の大切さにも気付いてもらえたら」と話す。

 田中さんは当初、地産地消を目指し、原料の昆虫も含めて現地調達を目指していた。しかし、イナゴやバッタの入手が難しいため、ソース作りも継続していけるかどうかは分からない。

 「害虫がおいしい食品になるとわかれば、農家も見方を変え、無農薬栽培が増えるかもしれない」。こう期待する田中さんは「まずは昆虫ソースで、(昆虫を)食べたことのない人の先入観を壊してみたい」と話している。

grasshopper注目したのは、「田畑を探してもバッタが見つからなかった」という部分。

記事ではその原因を「農薬の散布のため」と示されています。

たしかに、言われてみると、田の近くを通ってもバッタにでくわすことはほとんどありません。

そもそも、農作物がバッタに食われないように、農薬を散布しているわけですから、それも当然です。

しかしながら、筆者の実体験からすると、田畑以外に生息するバッタの数は減っていないという印象です。

具体的には、「河川敷」や「公園」など、草が豊富にありながらも、農薬の散布が行われない場所です。

その他にも、バッタその他の昆虫にとって天国のような場所があるのですが、どこだと思われますか?

それは、「廃棄物の不法投棄現場」です。

バッタが生息する場所が清潔かどうかはさておき、
1年以上放置された建設廃棄物等の不法投棄現場では、雑草が鬱蒼と生い茂る状態になるため、非常にたくさんの種類の昆虫が生息しています。

もちろん、硫酸ピッチなどの有害廃棄物の不法投棄現場ではそのような呑気なことを言っていられませんが、
不法投棄物の大部分は建設廃棄物ですので、腐敗物が混入していない限り、半年も経過すると、現場の土の上に雑草が生い茂っています。

また、不法投棄現場は人が利用しない土地になりますので、農薬をまく人もいません。

そして、幸か不幸か、通常は都市部ではなく、自然環境が近い郊外で発生する犯罪であるため、昆虫の生息域が近いという条件も整っています。

一般的には、「不法投棄現場」という言葉からは、「悪臭」や「危険」といったイメージを想起する方が多いと思います。

しかしながら、大部分の建設系廃棄物の不法投棄現場では、廃棄物が捨てられた当初こそ湿っぽい独特の臭い(解体工事現場に行くとかげる臭い)がすることはありますが、それも半年程度経過するとかなり収まりますし、「悪臭」や「有毒ガス」が発生することはまずありません(※腐敗物が埋められた場合はこの限りではありません)。

もっとも、すぐに害にならないからといって、不法投棄が認められることは決してありませんが、
バッタ1kgが4千円で売れるのであれば、不法投棄現場でバッタを育て、その収益で廃棄物の撤去を行う
という手段にも一考の余地がありそうです。

不法投棄によって、昆虫の生息域として最適な場所が出現するというのも皮肉な話ですので、
不法投棄によってではなく、里山のような人の手が入った自然環境を維持していきたいものです。

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