フリーライダーの問題

公共政策においても、納税者が納めた税金を原資として行われる事業である以上、「受益者負担」の原則が根底にあります(ごく一部の社会福祉政策を除く)。

ゴミ処理の場合は特にその傾向が顕著で、巷間常識とされている「自区内処理の原則」という言葉に、その影響を見ることができます。

しかしながら、手間や追加費用の負担を嫌うのも人間の性で、「隣の○○町なら粗大ごみを無料回収してくれる」という情報は、燎原の火のごとく速やかに燃え広がります。

本日ご紹介するのは、そのようなフリーライダー(ただ乗りする人)の規制に頭を悩ませる地方自治体の現状についてです。

2015年10月1日付 北海道新聞 「ごみ搬入時の住所確認強化 南空知3町

 長沼、南幌、由仁の3町でつくる南空知公衆衛生組合(長沼)の一般ごみ受け入れ量が、人口減にもかかわらず増えている。3町以外からの搬入があるためとみられる。同組合は1日から、施設に直接搬入する車両に対し、搬入者の住所を具体的に確認することとし、適正な受け入れを目指す。

 同組合は、受け入れごみのうち産業廃棄物以外を「一般ごみ」と位置づけ。可燃ごみ、不燃ごみ、資源ごみなどが含まれる。

 同組合が受け入れた一般ごみは2014年度で計6142トン。このうち直接持ち込まれたのは2016トンで、他は収集車での搬入だった。09年度の一般ごみは5868トンで持ち込みが1615トン。直接搬入分が6年間で401トン増えたのに対し、一般ごみ全体では274トン増。収集分が減ったのに、持ち込みが増えて全体を引き上げた格好だ。

 同組合によると、3町の周辺で粗大ごみなど一般ごみの有料化が進むにつれ、域外からとみられるごみ搬入が増加。この6年間で3町の人口が7%減り、企業数も大きく変わらないが一般ごみは5%増。同組合は「他市町で有料の粗大ごみが持ち込まれるケースが多い」とみる。

フリーライダーを全面的に規制するために一番手っ取り早い方法は、「粗大ごみ回収を有料化する」ことです。

しかし、それを行うと、本来なら無料で粗大ごみが回収されるはずであった本来の住民にしわ寄せが行きます。

それは不公平だということで、清掃工場の受入時に直接搬入車の住所提示を義務付けるという苦肉の策を実行するものと思われます。

北海道新聞の報道では、

 従来はごみ搬入者に自治体名だけを聞いていたが、今後は住所を具体的に聞き、答えられないときは運転免許証などの提示を求めることも想定するという。

とありますので、金融機関のように身分証の提示までは求めないようです。

日曜日以外のほぼ毎日の受入をしており、1年間に約2000トンの持ち込みがあったそうなので、
1日当たり約6.6トン程度の持ち込みがある計算となります。

これは可燃ごみを含めた数値なので、持ち込まれる粗大ごみの量はもっと少ないと思いますが、それでも日々結構な量の粗大ごみが持ち込まれていることがわかります。

南空知公衆衛生組合の取組みがフリーライダーの心情にうまく作用し、「違法な」搬入が少なくなると良いですね。

※「捨ててはいけない」「本来の回収場所ではない」場所に廃棄物を放置するのは、「不法投棄」に該当します。
 そのため、上記のフリーライダーは厳密には不法投棄をしていることになります。

このエントリーを含むはてなブックマーク

タグ

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ

このページの先頭へ