「羮に懲りて膾を吹く」の効用

記事タイトルは、「あつものにこりてなますをふく」と読みます。

「熱い吸い物で口内をやけどした人が、なますのような冷たい料理も吹いて冷ます」様子を切り取った言葉ですが、リスクを過度に重視して、必要以上に慎重な対応を取ることを揶揄するニュアンスでも使われます。

個人の慎重すぎる対応を馬鹿にするのは簡単ですが、
現代社会でも、このような慎重すぎる対応は枚挙に暇がありません。

むしろ、社会全体がそのような対応でなければ安心できないという、若干強迫神経症的なきらいもあります。

しかしながら、社会を構成する個々の人間の不安を解消するためには、あえて「膾を吹いてみる」ことが有効な場合もあります。

今回ご紹介するのは、あえて膾を吹いてみた(?)調査の結末です。

2016年2月15日付 毎日新聞 「「横流し」見つからず…環境省全国検査

 環境省は15日、「カレーハウスCoCo壱番屋」の廃棄冷凍カツが横流しされた事件を受けて実施した産業廃棄物処理業者への検査の結果、他に廃棄物処理法違反は見つからなかったと発表した。

 同日までに、業者への指導・監督権限を持つ47都道府県と20政令指定都市など全115自治体に立ち入り検査の実施を求めていた。各自治体職員が、産廃の中でも食品廃棄物を取り扱う1798施設の現地を訪れるなどして、転売や産業廃棄物管理票の虚偽記載などの有無について調べ、不適切な状況は確認されなかった。

食品廃棄物を食品として転売しようという奇想天外な発想をする処理業者は、予想通りダイコー以外には皆無であったことが明らかになりました。

誰もが食品廃棄物が食品として売れるとは思っていなかったところに現れたコペルニクス的転回でもありましたので、
今回の事件によって、「あ、これって売れるんだ」と気づいた第二、第三の横流し業者が現れないとも限りません。

食品リサイクルはその事業単体で大儲けできる事業ではありませんので、目先の違法な収益に目がくらむ経営者が今後も出る可能性があります。

その意味では、横流し事件が大々的に報道されることによって、パンドラの箱が開いたような気もします。

パンドラの箱に最後に残ったのは「希望」でしたので、「希望」となりそうな「事実」をまとめておきます。

食品廃棄物の横流しは、「1年後の1億円」より「目先の100万円」を重視するという近視眼的な業者のところでしか起こりません。

大多数の処理業者は「目先の100万円」を得るために食品リサイクルに進出したわけではなく、
「食品リサイクルの社会的意義」や「地域貢献」、そして「自社の信頼性向上」のために、満を持して食品リサイクル事業に乗り出したところがほとんどです。

そうではない業者は、早晩経営が立ち行かなくなり、破産申請をするというのが常でした。

ビーフカツを横流ししたダイコーは、事業地周辺の住民から悪臭等の苦情を再三申し立てられていたそうですが、地域住民との関係性が好ましくない食品リサイクル業者には、そうなるしかるべき理由があることがほとんどです。

食品リサイクル業者選別の際には、「地域社会との関係性」を判断要素の一つに位置づけるべきかと思います。

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