マニフェストとは閻魔帳である

2016年2月15日付記事 「マニフェスト(産業廃棄物管理票)の実質的な役割とは(問題提起)」の続きです。

マニフェストの制度趣旨は「排出事業者による産業廃棄物の移動と処理状況の自ら把握」と「不適正処理の未然防止」にあるものの、実態としてその機能を果たせていないことを書きました。

しかしながら、そのような当初の目的は果たせていないものの、マニフェストは非常に重要な働きをしています。

それは、「不適正処理が発覚した際の閻魔帳になる」という機能です。


ご存知のとおり、閻魔帳は、悪事が露見した時に、嘘をついていたかどうかを照会するための記録ですが、マニフェストは運用量が多いだけに、契約書以上に閻魔帳としての役割を果たしています。

もっとも、不適正処理に使われるマニフェストには、閻魔帳のように正確無比な情報が記載されることはなく、むしろ、事実とは異なる内容が記載されることになります。

しかしながら、「マニフェストには○月×日に中間処理済みと記載してあるが、実際には処理せずに横流ししていたではないか!」という形で、行政・警察が独自につかんだ事実と突合され、矛盾点を指摘されることになります。

簡易明瞭な書式であるため、返送されてきたマニフェストを改ざんするのは逆に難しくなっています。

変な日本語ですが、マニフェストは「逆閻魔帳」と言えるかと思います。

現実に、
排出事業者に対して措置命令が発出される際や、
産業廃棄物処理業者に対して事業全部停止処分が科される際には、
マニフェストの運用義務違反が証拠として採用されることがよくあります。

マニフェストに嘘八百を書いていたとしても、それだけですぐに当局から違法行為として認知されるわけではありません(もちろん、立入検査時に検査官の目前で虚偽記載をして、その場で違反が発覚するケースもあります)。

しかし、廃棄物処理法違反が一度露見すると、地獄の審判の閻魔帳と同様に、マニフェストが違法行為(虚偽記載その他)の動かぬ証拠となります。

別の言い方をすると、
マニフェストによって、廃棄物処理フローをリアルタイムで把握するのは非常に困難だが、
マニフェストは事後の責任追及の材料としては非常に使いやすい情報なのです。

行政・警察というこの世の閻魔様に嘘をつかなくても済むように、マニフェストの使い方は完璧に理解しておきたいところです。

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