マニフェスト(産業廃棄物管理票)の実質的な役割とは(問題提起)

マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、今や産業廃棄物管理者にとっては周知の書式情報になったと思います。

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記載すべき内容は「産業廃棄物の種類」や「数量」その他、情報としては比較的シンプルなものばかりですが、実務においてはもっとも間違いが生じやすい手順となります。

※参考 当ブログ 2015年12月15日付記事 「マニフェストの法定記載事項とは

間違いが多数発生する理由は、「日々運用する書式であるため、最終的には膨大な運用量になる」という一点に尽きます。

では、そもそも、簡単な(と思われる)書式でありながら、なぜ運用のミスが起きるのでしょうか?

それは、排出事業者と産業廃棄物処理業者の双方が(場合によっては行政官も)、マニフェストの存在意義を理解していないからです。

マニフェストの建前としての制度趣旨は、誰もが知っている以下のようなものになります。

平成4年8月13日付衛環232号

特別管理産業廃棄物管理票制度は、排出事業者がその処理を委託した特別管理産業廃棄物の移動及び処理の状況を自ら把握し、あわせて、不法投棄等の不適正処理を未然に防止する等のために設けられたものである

マニフェストが初めて制度化されたのは平成4年の法改正であり、平成10年11月30日までは特別管理産業廃棄物のみがマニフェストの運用対象であったため、上記の通知では「特別管理産業廃棄物」と書かれています。

さて、図らずも、2016年の1月に起きた廃棄ビーフカツの転売事件では、
「排出事業者による産業廃棄物の移動と処理状況の自ら把握」と「不適正処理の未然防止」の両方が、実際には機能していないことが明らかになりました。

現実には、排出事業者は処理業者からの報告を待つだけであるため、産業廃棄物処理工程をリアルタイムで「自ら把握」しているわけではありません。

運用に携わる大部分の人の意識は、「廃棄物処理法で義務付けられているから運用しているだけで、自ら把握したいとは思っていない」というのが本音ではないでしょうか。

また、制度や仕組みを作るだけで不適正処理が未然になくなると思いたいところですが、
これまた今回の事件で、当事者が虚偽の情報を報告してしまうだけで簡単に不適正処理が実行できるということが、わかりやすい形で実現してしまいました。

このように、当初の制度趣旨自体はいまだにどれも実現していないと考えることができそうです。

「それなら、マニフェストは存在意義が無い形骸化したシステムなのか!?」という疑問を感じた人がいらっしゃるかと思います。

私見では、「当初の想定とは少しずれた部分で、実質的に非常に強力な効果を発揮している」と考えています。

そのため、「マニフェストには存在意義があるし、それを見越した上で実務に取組まねば、自社にとっての本質的なリスク対策にはならない」と思っています。

次回の記事で、その理由を解説します。

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