国交省カメラ装置横流し事件(その1 関係者の整理)

2016年8月17日付記事 「第2のダイコー事件か?」の続きです。

「第2のダイコー事件」と書いたのは、
・処理委託をしたはずの産業廃棄物を
・産業廃棄物処理業者が無断で転売をしながら
・マニフェスト上は処分終了報告をしていた
点がまったく同一だからです。

今回の事件で転売された廃棄物は、腐敗する食品廃棄物ではなく、元々の換価価値が高いカメラ機器でしたので、「第2のダイコー事件」と言うよりも、廃棄品の横流しの典型的な事例と言うべきかもしれません。

今回はたまたま国土交通省由来の廃棄物が横流しされたため、メディアが報じることになりましたが、この種の横流し事件は報道されないだけで、少なくない数の事例があるのが現実です。

すべての排出事業者と産業廃棄物処理業者にとって他人事ではない事件と考えた方が良さそうです。

さて、前置きはこれくらいにして、国土交通省の発表に基づき、今回の記事の本題である関係者の整理してみます。

国土交通省の発表では

国土交通省  ⇒  三菱電機  ⇒   下請    ⇒    再下請
と、あたかも国土交通省は“ただの”発注者であるかのように書かれています。

国土交通省が考えた役割を割り振ると、次のようになるようです。

(発注者?)  (排出事業者?) (収集運搬業者?)  横流しをした処分業者
国土交通省  ⇒  三菱電機  ⇒   下請    ⇒    再下請

現実はこうだったのでは?

しかしながら、カメラ装置はそもそも国土交通省の3地方整備局が使用していたものですので、カメラ装置の処理責任は国土交通省にあると考えるのが自然です。

(排出事業者) (無許可営業?) 
国土交通省  ⇒  三菱電機  ⇒ 収集運搬業者  ⇒ 横流しをした処分業者

これを前提とすると、三菱電機は無許可営業のブローカーということになります。
※環境省の処理業者情報検索システムで検索をしましたが、三菱電機本体では産業廃棄物処理業許可はヒットしませんでした。

また、国土交通省には無許可業者への委託という委託基準違反が発生することになります。

念のため、こちらの可能性もある

さすがに、天下の三菱電機と国土交通省がそのような初歩的な法律違反をするとは思えないので、別の可能性も考慮しておきます。

その可能性とは、
「カメラ装置の所有権を国土交通省が持っていなかった」

あるいは
「三菱電機が新品のカメラ装置を販売することとなり、旧装置を無償で下取りした」

の2つとなります。

もしそうなのであれば、
(排出事業者)  (収集運搬業者)  横流しをした処分業者
 三菱電機   ⇒   下請    ⇒    再下請

「下請」という表現が適切ではありませんが、廃棄物処理法には違背しません。

しかしながら、そうなると国土交通省は甚だ中途半端なポジションとなります。

自分が元々使っていた製品を無償で三菱電機に引き取らせながら、産業廃棄物処分終了結果まで報告させる、というのは少々虫の良すぎる要求のように思えます。

適切かつ完全な処分を求めるならば、国土交通省自らが処分費を負担し、排出事業者として処理業者と直接契約をするのが筋なのではないでしょうか?

もっとも、国土交通省がそのような要求をすること自体は違法ではありませんが、
カメラ装置の流出を防ぎたいという意思があったのであれば、下取り回収を要求すること自体が本末転倒と言わざるを得ません。

下取りの注意点

カメラ装置を下取り回収の対象とする場合は、「無償で回収」というのが絶対条件です。

そのため、機器更新に伴い、三菱電機が「下取り費用」や「廃棄処理費」等の名目で、1円以上の代金を請求していた場合、下取り回収スキームは成立しません。

その場合は、上述したとおり、三菱電機は産業廃棄物処理業の無許可営業をしたことになります。

取材をすればすぐにわかることですので、メディアの方は上記の費用の有無を調べてみると良いですね(笑)。

「下取り回収って何?」と言う方は、当ブログ内を検索していただくか、


長岡文明先生との共著「廃棄物処理法の重要通知と法令対応」で、しっかりと解説させていただいておりますので、そちらをご参照していただけると幸いです。

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