国交省カメラ装置横流し事件(その2 誰のどこが違法か)

2016年8月19日付記事 「国交省カメラ装置横流し事件(その1 関係者の整理)」の続きです。

今回は当事者ごとに廃棄物処理法違反の可能性や有無を検討してみます。

横流しをした処理業者以外は、前回記事のおさらいになりますが。

国土交通省(排出事業者)

無許可業者(三菱電機)にカメラ装置の処分を委託したのであれば、無許可業者への処理委託(廃棄物処理法第25条違反)に該当する可能性あり。

国交省が排出事業者にならないケースは、
・カメラ装置を三菱電機からリース、あるいはレンタルしていた
・新品のカメラ装置を三菱電機から購入するに当たり、旧製品を三菱電機に無償で下取回収してもらった
の2パターンしかありません。

カメラの更新は、建設工事には該当しませんので、廃棄物処理法第21条の3の「元請業者が建設廃棄物の排出事業者になる」という条文は当然使えません。

建設工事の発注者でもある国交省がこの条文を誤解していたとは考えにくいのですが、実際はどうなのでしょうか?

国交省がそのような杜撰な違反をしているとは思えないので、カメラ装置は、下取回収の対象か、三菱電機からのリースあるいはレンタルだったのでしょう!


ちなみに、宣伝で恐縮ですが、廃棄物処理法第21条の3についても、長岡文明先生との共著「廃棄物処理法の重要通知と法令対応」で、しっかりと解説させていただいておりますので、建設関係者の方以外も一度お目通しいただけると幸いです。

三菱電機

国交省から古いカメラ装置の処理を受託したのであれば、三菱電機は無許可営業(廃棄物処理法第25条違反)をしていたことになります。

しかしながら、天下の三菱電機がそのような大胆な法律違反をしているとは思えないため、カメラ装置を無償で下取回収したか、カメラ装置は元々三菱電機の所有物であったかのいずれかに違いありません!

横流しをした処理業者

ダイコー事件では、詐欺と食品衛生法違反でダイコーの元会長が逮捕されましたが、
今回の事件では、落札者を欺いて偽物をつかませたわけではなく、本物のカメラ装置の売買をしているため、詐欺には該当しません。

言う間でもなく、食品衛生法も関係ありません。

では、廃棄物処理法違反の方はどうか?

有価物として売買が成立し、常識的にも申し分なく有価物と判断できるカメラ装置でしたから、不法投棄罪には成り得ません。

また、中間処理業者ですので、廃棄物処理の前段階で異物や有価物を抜き取ること自体は認められる余地があります。
※注意 積替え保管許可との兼ね合いもありますので、中間処理業者に有価物の選別・抜取りが無制限に認められるという意味ではありません。

唯一廃棄物処理法違反が明確に成立する点としては、
マニフェストで「有価物拾集量」を記載せず、「全量処分完了」と報告したことでしょうか。

この場合は、マニフェストの虚偽報告(廃棄物処理法第29条違反)が成立します。

このように考えると、
法律の罰則的には、横流しをした処理業者よりも、国交省や三菱電機に廃棄物処理法違反が無かったかという点が気になります。

ネタの提供と解説は終わりましたので、後は心あるメディアの取材力に期待しております。

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