「抑止」の意味を辞書で調べてみよう
最近は、税金の無駄遣いを糊塗するための方便として、「抑止」というもっともらしい言葉がよく登場します。
特に、行政が運用するドローンを紹介する報道では、「抑止効果がある!」という表現が必ずセットで現れます。
2016年9月8日付 OBS大分放送ニュース 「産業廃棄物の不法投棄現場をドローンで調査」
人が立ち入る事ができない不法投棄現場の実態を把握しようと、(筆者注:大分)県は8日由布市内で小型無人機、「ドローン」を活用した調査を実施しました。不法投棄現場に投入された小型無人機、「ドローン」。県は、これまで不法投棄が見つかった場合、職員が目視で現場の状況を確認していましたが、立ち入りが危険な場所も多く全容把握が困難となっていました。8日は畳などが大量に捨てられている由布市庄内町の山中でドローンによる空からの撮影を実施し、廃棄物の量や投棄者につながる手がかりがないかを詳しく調べていきました。県によりますと、県内で2015年1年間に確認された産業廃棄物の不法投棄は28件に上り、最近は業者に比べて個人による投棄が多くなっているということです。ドローンによる現地調査は全国でも例が少なく、県は不法投棄の抑止効果にもつながれば、と期待を寄せています。
「抑止」が「神仏の加護」や「霊験」と同様に、気軽に、あるいはオカルティックに扱われている気がしてなりません(苦笑)。
記事タイトルのとおり、「抑止」を広辞苑で調べてみると、
おさえとどめること
と、漢字を読み下しだけの非常に簡易、かつ残念な定義しかされていませんでした。
用例として「核抑止力」が一つだけ挙げられており、「抑止ってなんだかわからんがスゴイ効果があるんだぞ」と、広辞苑執筆者も気軽に「抑止」を扱っているという印象を受けました。
私見では、「反撃」や「ペナルティ」を伴わない「抑止」は、「ただのこけおどし」でしかなく、
「核抑止力」の場合、「核兵器を実際に持っているので、攻撃をしてきたら核兵器で反撃するよ」という、「反撃の可能性」を伴った前提条件がないと成り立ちません。
しかるに、ドローンによる空撮の場合、
ミサイルを搭載した無人偵察機でもなく、ただ上空から廃棄物の状況を撮影するだけですので、
行為者に対する反撃や、逮捕の可能性を伴うペナルティを期待するのは事実上不可能です。
ドローン空撮で不法投棄に対する抑止効果が発生する条件は、
「空撮の結果、自分が捕まえられるかもしれないという妄想ができ」、
「だったら、不法投棄は割に合わない行為なので自粛しよう」という、100%合理的な思考をする不法投棄予備軍がいる場合のみです。
そんな人は現実には存在しないことまで証明する必要はないですよね。
ドローン投入の理由を、「人が立ち入れない場所での、投棄量調査を円滑に行うため」と正直に言ってくれれば、100%尊重したのですが。
ドローン専用の収納ジェラルミンボックスを準備するなど、ドローンを大切に扱おうという気持ちだけは伝わってきました。
※画像はOBS大分放送ニュースから転載
でもこの箱はきっとオーダーメイドですよね。羨ましいぞ(笑)。
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2016年9月9日 | コメント/トラックバック(0) | トラックバックURL |
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